2台のドップラーレーダー観測からリトリーバルされた梅雨前線に伴うレインバンドの熱力学的構造と維持機構
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概要
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1988年7月に実施された梅雨末期集中豪雨の特別観測期間中、梅雨前線に伴ったレインバンドが九州を通過し、その内部の風と降水のデータがドップラーレーダーのデュアルモード観測により得られた。この論文の目的は、そのデータにリトリーバル法を適用することによりレインバンドの熱力学的構造を調べ、維持機構を明らかにすることである。このレインバンドは中緯度や熱帯のスコールラインと似た構造を持ち、北東から流入した乾燥空気が強雨域に発達した対流規模下降流と合流し、下層で発散していた。南西からの暖湿な流れはleading-edgeに向かった発散流と収束し、後方に傾いた対流規模の上昇流を形成していた。リトリーバルの結果、対流規模上昇流の高度4km以上で気温の正の偏差域が示され、ガストフロントの後方に乾燥空気中での雨滴の蒸発により形成された冷気プールが示された。気温場と流れの場を反映し、下層のガストフロント後方には気圧の正の偏差域が、対流規模上昇流の下側には気圧の負の偏差域が示された。また層状性領域の下層には、後部から流入した乾燥空気の下降による断熱加熱を反映し、低圧域が示された。この気温と気圧の偏差の分布から、対流規模上昇流は高度4km付近まで上向きの気圧傾度力によって、それ以上の高度では正の浮力によって維持されていたといえる。また対流性領域中層の低圧域に伴う水平気圧傾度力は上昇流を後方に傾ける役割をしていた。後方に運ばれた雨滴は上昇流を妨げることなく対流規模下降流中に落下し、強いレインバンドが維持された。
- 社団法人日本気象学会の論文
- 1995-06-25
著者
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