新規非イオン性等浸透圧造影剤iodixanolの一般薬理試験
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概要
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静脈内投与によるiodixanolの薬理特性を評価すると同時に, 動脈内投与等のより直接的な投与経路によってiodixanolの血管痛, 中枢および循環作用を既存の非イオン性造影剤と比較検討した。1.中枢神経および体性神経系 Iodixanolの静脈内投与(320-3, 200mgI/kg)は, 最高用量でマウスの自発運動量を抑制した以外には, マウスの一般症状, hexobarbital麻酔時間, 電撃あるいはpentylenetetrazol誘発痙撃および痛覚閾値, あるいはウサギの体温, 慢性脳波および腓腹筋収縮に対してほとんど影響を及ぼさなかった。Iodixanolの脳室内投与(3.2および32 mgI/rat)は, ラット脳波上にスパイクを散発させたが, マウス一般症状に対しては9.6 mgI/mouseまで影響しなかった。これらの作用はiohexolあるいはiopamidolとほぼ同等であった。Iodixanolの大腿動脈内投与(320 mgI/guinea pig)は, 2/16例のモルモットにおいて血管痛を誘発したが, この作用はiohexolおよびiopamidolに比較してより軽微であった。2.消化器および呼吸循環器系 Iodixanolは, 最大投与量においてもマウスの胃腸管輸送能には影響しなかった。麻酔イヌの呼吸循環器系に対しては, 1,000あるいは3,200 mgI/kgの静脈内投与によって, 大腿動脈拡張作用あるいは呼吸数の増加作用を示したが, 他の循環パラメーターに対しては殆ど作用を示さなかった。Iodixanolの左心室内(1,920および6,400 mgI/dog)あるいは左冠状動脈内注入(640および1,920 mgI/dog) (麻酔イヌ)は, 心電図の変化(R波増高, ST下降およびT波上昇(左心室内投与時)またはST上昇およびT波下降(冠状動脈内投与時), QRS間隔延長等)。心収縮力の増加あるいは徐脈等を誘発したが, いずれも一過性の軽微な作用であった。これらの作用は, iohexolあるいはiopamidolとほとんど差はなかった。3. 摘出臓器 Iodixanolは, 3.2×10<-3> gI/mlの濃度まで, acetylcholine, histamine, serotonin, nicotine, BaCl_2 (モルモット回腸), methacholine (モルモット気管), oxytocin(ラット妊娠子宮)およびisoprenalin(モルモット心房)による反応に影響を及ぼさなかった。また, 神経刺激(モルモット輸精管)による反応あるいは自発性収縮(ラット非妊娠子宮, モルモット心房)に対しても影響しなかった。4. 尿量および尿中電解質排泄 Iodixanolは320 mgI/kg静脈内投与により, 尿排泄量を軽微に増加させた(ラット)。3,200 mgI/kgまで用量を増加すると, 尿中Na^+およびCl^-排泄の減少を伴う尿量の顕著な減少が観察されたが, いずれの作用も投与3時間後には消失した。以上の成績により, iodixanolの静脈内投与は, 臨床上問題となるような薬理作用を示さないことが示唆された。またiodixanolの, 血管痛誘発活性(動脈内投与)はiohexolあるいはiopamidolよりも弱いが, 中枢作用(中枢内投与)あるいは循環作用(左心室内, 冠状動脈内注入)には3者間で明確な差はないと推察された。
- 1995-10-15
著者
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野村 護
日本トキシコロジー学会講習会小委員会
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野村 護
第一製薬株式会社 開発研究所 安全性研究センター
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森 和彦
第一製薬(株)開発研究所安全性研究センター
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北野 裕
第一製薬株式会社 安全性研究所
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高砂 浄
第一製薬株式会社 安全性研究所
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牧野 充裕
第一製薬株式会社 安全性研究所
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笠井 義男
第一製薬株式会社 安全性研究所
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森 和彦
第一製薬株式会社 開発研究所 安全性研究センター
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小林 令子
第一製薬株式会社 開発研究所 安全性研究センター
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萩原 雄大
第一製薬株式会社 開発研究所 安全性研究センター
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広橋 正章
第一製薬株式会社 開発研究所 安全性研究センター
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ALGATE Derek
Huntingdon Research Centre Ltd.
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広橋 正章
第一製薬(株)開発研究所安全性研究センター
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