Angiotensin I 変換酵素阻害剤 captopril の実験的毒性研究 : 第3報 ラットに於ける12ヶ月慢性毒性について
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概要
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完全に調整されたバリヤーシステム内でSPF飼育 Sprague-Dawleyラットを用いて angiotensin I変換酵素阻害作用(ACEI)を特長とするcaptoprilの長期大量投与による生体反応を検討した。投与用量は 30, 100, 300, 900 mg/kg/dayで, 検体は基礎飼料に混ぜ自由摂取させ計画した投与量になる様混入検体量を調節した。途中3ヶ月での中間試験, 12ヶ月連続投与試験, その後3ヶ月基礎飼料にもどして回復試験として, 以下の成績を得た。(1) 検体投与による死亡動物はなかった。(2) 体重増加は最高投与群で有意に低く, 最高投与量は十分に毒性試験の目的を果たしていた。(3) 最大無作用量は30 mg/kg/day前後と認める。(4) 検体の吸収による皮膚反応として尾端の暗赤色の発赤をみたがほぼ6ヶ月で自然に消退した。(5) 摂水量増加, 尿量増加, 尿比重低下が雄に特に著明であった。検体投与中止後もこの有意の変化は続いた。(6) 血圧は雌雄共に用量依存的に低下し検体投与を中止すれば対照群の血圧に復した。(7) 溶血性貧血と診断し得る貧血(造血組織の賦活化)を認めた以外, 白血球, 血小板に異常なく骨髄機能の抑制をみなかった。(8)血漿無機燐, KおよびBUNは有意に高値を示しK以外は投与中止3ヶ月の回復期の終りでもなお高かった。(9) 腎臓, 肺臓の重量増加と心臓重量減少以外特定の変化はなかった。(10) 臓器ACE活性は長期投与によって, 肺臓, 腎臓ともに抑制されるが投与停止により可逆的に対照群のACE活性値にかえった。(11) 腎renin活性は投与各群共対照群の2-3倍に上昇するが休薬後3ヶ月で逆に対照群より低下した。(12) 特長ある腎臓病理学所見: (a)腎糸球体輸入動脈から小葉間動脈にまで及ぶ動脈壁の肥厚があり, 平滑筋細胞および膠原線維の増生を認めた。(b)また肥厚した動脈支配領域の細尿管に限局した再生上皮と, 糸球体, 細尿管周囲の浮腫と形質細胞の浸潤巣があった。(C)電顕的に多数のJG顆粒をもつ大型の傍糸球体細胞(JG細肛の増生が, 肥厚した動脈の糸球体に近接する部分あるいはPolar cushionに認められ, これらの細胞間隙を走る基底膜の軽度の肥厚があった。(d)3ヶ月投与休止した動物では輸入動脈から小葉間動脈にかけての壁の肥厚はなお認められるが, JG顆粒をもつ傍糸球体細胞の数はむしろ少く, また形質細胞を主体にした細胞浸潤巣も著明に減少した。JG顆粒の減少は腎renin活性の減退と一致し, BUN, 無機燐値が依然とじて高値であることは動脈壁肥厚がなお継続していることと関連があると思われる。(13) 加齢病変である心臓の限局性心筋線維化および腎糸球体血管の硝子様変性の発生頻度もその程度も, 検体の投与量に依存し減少し抑制された。検体投与を中止した3ヶ月後には, 加齢病変の頻度も程度も対照群と差がなかった。検体投与期間中の, 心臓, 腎臓の加齢現象の抑制は検体そのもののもつ血圧降下作用に基づくものと思われる。
- 日本トキシコロジー学会の論文
- 1981-12-25
著者
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今井 清
Food And Drug Safety Center Hatano Research Institute
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今井 清
財団法人 食品薬品安全センター 秦野研究所
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大滝 恒夫
財団法人 食品薬品安全センター 秦野研究所
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吉村 慎介
財団法人 食品薬品安全センター 秦野研究所
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橋本 虎六
財団法人 食品薬品安全センター 秦野研究所
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橋本 虎六
食品薬品安全センター秦野研究所
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吉村 慎介
(財)食品薬品安全センター 秦野研究所 病理部
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今井 清
食品薬品安全セ 秦野研
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