水稲の子実生産に対する実肥の効果

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豊熟期間における乾物生産は子実生産を高める上で重要であるが,これは登熟期における葉身の窒素濃度と光環境条件によって左右されることから,本研究ではSinkとしての頴化数が既に決定した出穂期以降間引処理で草冠内の光環境を,実肥処理で葉身窒素濃度を変え,頴花容量に対する同化産物の比率を大幅に変動させることによって実肥の効果を窒素の動態も含めて検討した。結果の大要は以下のとおりである。1.登熟期における株当りの乾物増加重(△W)および穂重増加重(△E)は各品種とも間引処理によって異なり,登熟前期では処理が早いほど,後期では遅いほど△W,△Eは高まることが示された。また前期に△W,△Eが高い品種,処理区では後期に凋落する傾向がみられた。2.実肥施用区では無施用区に比べて△W,△Eが高まるとともに後期における凋落はみられなかった。とくに穂重型の密陽23号では実肥の効果が顕著であった。3.登熟期間中の△Wと△Eとの間には,品種,処理も含めて高い正の相関関係がみられたが,例外として,ニシホマレの場合は△Wに対して,△Eは増加しなかった,これは同化産物に対して,頴花の容量が不足しているためであることがわかった。4.△Eと穂に含まれる窒素の増加重(△EN)との間には高い正の相関関係が認められるとともに△ENは葉身からの窒素減少量(△LN)と密接に関係していることが示された。ただし,実肥区は△ENと△LNとの間に有意な相関が認められなかった。5.以上から,頴花容量が十分な場合,穂への同化産物の蓄積に伴って葉からの窒素の移行がおこるため,葉の光合成能力は低下し,登熟後期における乾物生産の低下がおこるが,実肥は葉からの窒素の移行を補う効果があること,とくに多収性の密陽23号は△Eが大きいため,△LNも大きく,実肥効果がその分だけ大きくなることが明らかになった。
日本作物学会の論文
1981-12-10

水稲の子実生産に対する実肥の効果

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