除草剤施用による水田土壌の微生物相の変動

元データ 1986-12-05 社団法人日本土壌肥料学会

概要

除草剤の連用が水田土壌の微生物相と窒素を中心とする物質循環に及ぼす影響を明らかにするため,まず,本報では,昭和52年度より3か年にわたって水田作土層における微生物相の変動を調査した。1)調査に先立ち,土壌試料の採取・調製の方法と微生物計数値のバラツキについて統計学的に検討した結果,本研究における微生物測定用の土壌試料は,各処理区2反復のそれぞれ3か所から採取した計6個の単位試料をよく混合・縮分して調製することが適切であることを確かめた。2)作土表層の糸状菌,グラム陰性菌およびセルロース分解菌の各菌数は,耕起前に多く,湛水および除草剤処理により減少した。糸状菌数は,除草剤区が対照区よりやや多い傾向がみられた。放線菌数および全細菌数は,湛水により増加し,薬剤処理により減少した。とくに,パラコート区およびベンチオカーブ区の全細菌数がかなり減少した。嫌気性菌数は耕起前に少なく,湛水後増加したのに対し,硫酸還元菌数は耕起前に多く,湛水により一時減少した後,再び増加した。両者とも水稲の生育中期には,ベンチオカーブ区が対照区をやや上回った。硝化菌,緑藻およびラン藻の各菌数は,湛水後の水稲の生育初期に増加し,以後前二者は変動が小さかったが,後者は水稲の生育後期に減少した。落水期には各菌数とも増加したが,とくに各除草剤区のラン藻数は対照区をかなり下回った。3)作土下層の微生物相は,多くの場合,表層と同様の変動パターンを示したが,菌数は表層より少なく,またその変動幅も狭かった。いずれの除草剤区とも全細菌数は明らかに対照区を下回った。一方,硫酸還元菌数は,表層と同様に水稲の生育中期にベンチオカーブ区が対照区より多かった。緑藻数およびラン藻数の変動パターンも表層とよく類似した。4)除草剤施用の直接的影響を明らかにするため,除草剤処理の前後を中心に微生物相を調査した。糸状菌数は,処理後クロメトキシニル区とベンチオカーブ区で対照区をやや上回った。放線菌数および全細菌数はいずれも除草剤区が対照区よりも少なく,とくに後者は,処理直後のパラコート区とベンチオカーブ区でかなり低下した。したがって,作土表層のB/F値は,概して除草剤区が対照区よりやや小さかった。グラム陰性菌数は,クロメトキシニルおよびベンチオカーブの処理直後に減少した。セルロース分解菌および緑藻も,クロメトキシニルおよびベンチオカーブの施用による影響がみられた。硝化菌およびラン藻の各菌数は,いずれの除草剤区も対照区よりかなり少ない傾向を示した。とくにラン藻は,ベンチオカーブ処理直後に,また,クロメトキシニル処理では約2週後に対照区との菌数差が拡大した。嫌気性菌数は,処理直後を通じて対照区とほぼ同様の変動パターンを示し,薬剤処理の影響は小さかった。5)以上の結果から,除草剤連用による水田土壌の微生物相の変動は,薬剤に対する微生物の直接的応答,ならびに土壌環境,有機物の供給量,水稲の生育時期等の変化が各種微生物に及ぼす影響によるものと考えられた。

著者

甲斐 秀昭 九州大農:(現)西南女学院
河口 定生 九州大院農
金山 拡 佐賀県農業試験場
甲斐 秀昭 九州大学農学部
河口 定生 九州大学農学部
蒲田 昌治 九州大学農学部
金山 拡 佐賀県農業試験場:(現)佐賀県農林部農産普及課

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