除草剤施用による水田土壌の遊離窒素固定微生物相と窒素固定能の変動

元データ 1987-10-05 社団法人日本土壌肥料学会

概要

除草剤施用による水田作土の微生物的窒素固定能, およびそれに関与する遊離窒素固定微生物相の変動について水稲の全耕作期間にわたり詳細に調査した. 1) 作土表層のアセチレン還元能は, 全般的にみて耕起前に高く, それ以降湛水直後まで著しく低下した. その後, 水稲の生育にしたがって増大し, 出穂・開花期にピークに達したが, 落水後の登熟期には再び低下した. 2) 各処理区間のアセチレン還元能を比較すると, 全期間を通して対照区が最も高く, ついでパラコート区で, クロメトキシニル区およびベンチオカーブ区は, 明所好気, 同嫌気, 暗所好気, 同嫌気のいずれの条件下でも概して低く推移した. 3) 除草剤処理の前後における作土表層のアセチレン還元能においても, 上記の各条件下で処理区間に差異が認められた. すなわち, パラコートよりもクロメトキシニルおよびベンチオカーブ処理による影響が著しく, その程度は暗所条件下よりも明所条件下で大きかった. 4) 窒素固定微生物相の時期別変動を調査した結果, Azotobacter属またはBeijerinckia属菌数は耕起前に高く, 湛水により減少し, 出穂期に増加したが, 落水後の登熟期に再び減少した. Clostridium属菌数は湛水によりかなり増加し, その後各除草剤区で減少したが, 出穂期には各処理区とも菌数の回復または増加がみられ, 落水により再び減少した. いずれの菌数とも, 除草剤区が対照区よりもやや低く推移した. 5) ラン藻数は, 湛水後の水稲の生育に伴って増加した. とくに, 対照区の菌数は分けつの最盛期から出穂期にかけて著しく増加した. 一方, 光合成細菌数は湛水により急激に増加し, その後出穂期から登熟期にかけてかなり減少した. 各菌数は全期間を通して対照区で多く, 除草剤区で低く推移した.また,これらの菌の薬剤負荷に対する直接的応答は, とくに湛水期間中のクロメトキシニル区およびベンチオカーブ区で菌数が少ない傾向を示した. 6) 各処理区における明所好気, 明所嫌気, 暗所好気, および暗所嫌気の各条件下でのアセチレン還元能は, 全般的にみてそれぞれラン藻数, 光合成細菌数, Azotobacter属またはBeijerinckia属菌数, およびClostridium属菌数との間に明らかな対応関係のあることが確認された. 7) 水稲の全耕作期間中の調査で得られた作土表層のアセチレン還元能から, 水田作土層における推定窒素固定量を試算したところ, 対照区が最も多く, ついでパラコート区で, クロメトキシニル区およびベンチオカーブ区はいずれも対照区の1/2以下でかなり低かった.8)以上の水田の作土の表層土壌におけるアセチレン還元能の変動は, 各種窒素固定微生物の除草剤に対する応答の差異によるところが大きいが, そのほかに, 水稲生育に伴う土壌環境の変化などの間接的要因も絡み合った結果と考えられた.

著者

甲斐 秀昭 九州大農:(現)西南女学院
河口 定生 九州大院農
甲斐 秀昭 九州大学農学部
河口 定生 九州大学農学部
蒲田 昌治 九州大学農学部
河内 埜一之 佐賀県農業試験場
河内 埜一之 佐賀県農業専門技術員室
河内埜 一之 佐賀県農業試験場

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