健常者および顎機能障害者における習慣性咬合位から咬頭嵌合位への下顎変位の比較(第487回 大阪歯科学会例会 抄録)
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概要
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緒言:咬頭嵌合位の位置が適切であること,咬頭嵌合位に安定した咬合接触が存在することが,顎口腔機能を円滑に営む上で,重要な要件であるといわれている.健常者では,習慣性咬合位あるいは筋肉位と咬頭嵌合位がほぼ一致すると考えられている.また顎機能障害者では,習慣性咬合位から咬頭嵌合位への下顎変位量が,健常者に比べて大きいという報告がある.すなわち,咬みしめに伴って下顎が変位する不安定な状態が長期にわたって継続したため,種々の顎機能障害を発症したものと考察されている.しかし,咬頭嵌合に件う下顎変位を三次元的に解析した報告は少なく,その変位量,変位方向と顎機能障害との関連については不明な点も多い.われわれはこれまでにシリコーンバイトを直接非接舷彫状計測し,コンピュータ上で解析する三次元咬合検査法を開発してきた.今回この三次元咬合検査法を用いて,健常者および顎機能障害者の,習慣性咬合位から咬頭嵌合位への下顎変位を三次元的に解析し,その変位量および変位方向の違いを明らかにすることを目的として本研究を行った.材料および方法:被検者として,健常有歯顎者6名と顎関節節の雑音を有する顎機能障害者6名を選択した.Light clenchingと30%MVCの咬合力を発揮させて採得した,2種類のシリコーンバイトを試料として,非接触彫状計測を行った.頭部エツクス線CTから,頭蓋顔面骨の三次元構築データを抽出し,その解剖学的標点から,基準座標を設定した.テフロン球をマーカーとして三次元構築データの位置合わせを行った後に,上下顎歯列咬合面の位置合わせにより,習慣性咬合位から咬頭嵌合位への下顎変位を算出した.下顎変位を表現するパラメータとして,下顎咬合平面を決定する三角形の重心の変位量および変位方向をMOD(movement of dentition),左右側下顎頭最上点の変位量および変位方向をMOC(movement of condyle)とした.結果:MOD,MOCともに健常者に比べて顎機能障害者で有意に大きい傾向を示した.また健常者ではMODが0.13±0.08mm,MOCが0.32±0.21mm,顎機能障害患者ではMODが1.32±1.46 mm,MOCが1.40±1.20 mmであった.MODについて,顎機能障害者では健常者に比べて前後的,左右的および上下的に広く分布し,上下的にはすべての顎機能障害者において,上方に変位する傾向を示した.MOCについて,顎機能障害者では健常者に比べて前後的,左右的および上下的に広く分布し前後的にはすべての顎機能障害者において,後方に変位する傾向を示した.結論:習慣性咬合位から咬頭嵌合位への下顎変位が,顎関節雑音の発症に関連している可能性が示された.
- 大阪歯科学会の論文
- 2003-03-25
著者
-
川添 堯彬
大阪歯大・歯科補綴第2
-
佐藤 正樹
大阪歯科大学有歯補綴咬合学講座
-
佐藤 正樹
大阪歯大・有歯補綴
-
川添 堯彬
大阪歯大 有歯補綴咬合
-
朴 康鉐
大阪歯大
-
朴 康鉐
大阪歯科大学有歯補綴咬合学講座
-
佐藤 正樹
大阪歯大・大学院・歯科補綴第2
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