健常者の咬頭嵌合位における咬合接触状態の三次元解析 : 上顎臼歯について(大阪歯科大学大学院歯学研究科博士(歯学)学位論文内容要旨および論文審査結果要旨の公表)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
咬頭嵌合位は機能的に最も重要な下顎位であると考えられている.咬頭嵌合位の位置が適切であること, 咬頭嵌合位において安定した咬合接触が存在することが, 顎口腔機能を円滑に営むうえで, 重要な要件でであるといわれている.しかし, これらの評価基準はいまだ確立されていない.われわれはこれまでに, シリコーンバイトの上下顎咬合面を直接非接触形状計測し, コンピュータ上で解析する三次元咬合診査法を開発してきた.今回この三次元咬合診査法を用いて, 健常者の咬頭嵌合位における咬合接触状態を三次元的に解析し, 上顎臼歯における咬合接触の評価基準について検討することを目的として本研究を行った.被験者として, 顎口腔系に自覚的他覚的に異常を認めず, 臼歯部に齲触および修復処置のない健常有歯顎者5名(男性4名, 女性1名, 27.8±2.7歳, 以下, 健常者とする)を選択した.被験歯は, 上顎第一小臼歯, 上顎第二小臼歯, 上顎第一大臼歯および上顎第二大臼歯各10歯, 計40歯とした.各被験者に最大随意咬みしめ(maxi-mum voluntary clenching, 以下, MVCとする)を100%とした時の30%MVCの咬合力を発揮させて, 咬頭嵌合位の咬合状態を印記したシリコーンバイトを採得した.非接触三次元計測装置(SURFLACER VMS-250R, UNISN社製)を用いて, シリコーンバイトの形状計測を行った.上顎咬合平面を基準平面として, 基準座標を設定した.上下顎歯間距離60μm以下の領域を咬合接触域として, シリコーンバイトの三次元構築データから, 咬合接触域に含まれる計測点を抽出した.第一, 第二小臼歯の咬合面を頬側咬頭, 舌側咬頭, 近心辺縁隆線および遠心辺縁隆線の4部位に分類した.第一, 第二大臼歯の咬合面を近心頬側咬頭, 遠心頬側咬頭, 近心舌側咬頭, 遠心舌側咬頭, 近心辺縁隆線および遠心辺縁隆線の6部位に分類した.咬合面上で一つの計測点が占める面積と咬合面に対する法線方向を表示する, 面積ベクトルを算出した.咬合接触域の傾斜方向を表現するために, 前頭面観における側方的な傾斜方向(以下, Lat-eral angleとする)と, 矢状面観における前後的な傾斜方向(以下, A / P, angleとする)の2つのパラメータを用いた.咬合接触点数は上顎第一小臼歯で2.4±0.8点, 上顎第二小臼歯で2.8±1.1点, 上顎第一大臼歯では7.0±1.5点, 上顎第二大臼歯では6.7±2.1点を示し, 過去の報告と同様の傾向を示したことから, 本研究の被験者および被験歯は, 健常者の代表例として妥当であったと考えられる.上顎臼歯咬合面において, 60%以上の接触率をもち, かつ1点以上接触している部位を高頻度接触部位とした.高頻度接触部位およびLateral angle, A / P angleのピーク値あるいは一様な分布を示す場合にはその中央値から推定した, 健常者の上顎臼歯における出現頻度の高い咬合接触域の位置および傾斜方向を示した.これらの咬合接触域は, 健常者の多くの咬合面に存在することから, 安定した咬合関係を保ち円滑な機能を営むうえで, 重要な働きをしていると考えられる.以上のことから, 三次元咬合診査法を用いて健常者の咬頭嵌合位における咬合接触状態を三次元的に解析し, 上顎臼歯において出現頻度の高い咬合接触域の位置および傾斜方向を示すことができた.
- 大阪歯科学会の論文
- 2000-06-25
著者
関連論文
- 1 短縮歯列と完全歯列の臨床検査法による比較(第498回 大阪歯科学会例会)
- 2 健常者の咬頭嵌合位を安定させる方向成分別の咬合接触面積の解析(第507回 大阪歯科学会例会)
- 健常者および顎機能障害者における習慣性咬合位から咬頭嵌合位への下顎変位の比較(第487回 大阪歯科学会例会 抄録)
- 健常者の咬頭嵌合位における咬合接触状態の三次元解析 : 上顎臼歯について(大阪歯科大学大学院歯学研究科博士(歯学)学位論文内容要旨および論文審査結果要旨の公表)
- 8 健常者の咬頭嵌合位における咬合接触状態の三次元解析 : 上顎臼歯について(第469回 大阪歯科学会例会)
- 咬合印象法と通法から製作したクラウンの試適時での調整に関する臨床試験