HeLa細胞のストレス蛋白質合成に及ぼす種々の化学物質の影響(in vitro)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究では種々の物質のストレス蛋白質(HSP)合成誘導挙動に対する影響を調べ, 細胞代謝上からのHSP合成の意義を細胞の各種刺激に対する初期反応の観点から明らかにする目的で, とくに分子量70, 000のストレス蛋白質(HSP 70)について, 種々の化学物質の細胞に対する影響を調べた.実験材料は歯科用セメントや治療用材料の液成分を中心に, 他の化学物質を含めて10種類を選択した.ヒト子宮頚部由来のHeLa229細胞に各種材料濃度で作用させ, 濃度変化および作用時間の変化による細胞内でのHSP 70の合成誘導と細胞生存率を調べた.それぞれ, ウェスタンブロッティング法, HSP 70のモノクローナル抗体を用いたECLシステム(Enhanced Chemiluminescence System, Amersham Life Science)とニュートラルレッド(NR)およびMTTの取り込みによる方法で行い比較検討した.その結果, リン酸, メチルメタクリート, ホルマリン, 塩酸およびアクリルアミドによりHSP 70の合成誘導が作用後3時間から6時間の初期に細胞内変化として現れた.それに対して, ユージノール, イタコン酸, クロロホルム, アセトンおよびキシレンではその種類により異なるものの, 誘導され難いことがわかった.NR法およびMTT法による細胞生存率測定ではリン酸, ユージノール, イタコン酸, ホルマリン, 塩酸およびアクリルアミドで500μM以上の濃度で低下した.他の4物質では変化を示さなかった.HSP 70の合成誘導が生じた材料では, その濃度は細胞生存率の低下を示した濃度と同程度かわずかに低い濃度であった.細胞内の機能の一つであるHSP合成挙動により各種刺激に対する初期反応を把握でき, 刺激因子の濃度の点からも確認できた.今後, これらの化学物質の細胞に対するHSPへの生理学的役割についても解析することにより, その機序が解明できると考えられ, 材料の細胞代謝に及ぼす影響について知るうえで示唆が得られた.
- 1997-12-25
著者
関連論文
- 歯科材料の象牙質透過性(in vitro) : ユージノールの象牙質透過性
- 金属アレルギーが疑われた症例における修復物の分析
- 非貴金属の遺伝毒性試験
- P-47 歯科用アパタイト系材料によるストレス蛋白質合成について
- P13.bTCP/コラーゲンスポンジコンポジットの薬物徐放に関する検討 : 細胞成長因子の徐放動態とMSCの骨分化に及ぼす影響(一般演題抄録,第5回日本再生歯科学会)
- P12.β-TCPビーズ/アルジネート複合体のビーズ粒径が骨分化に与える影響(一般演題抄録,第5回日本再生歯科学会)
- P16.インジェクション型β-TCPビーズ/アルギン酸複合体の開発(一般演題(ポスター展示),第4回日本再生歯科医学会学術大会および総会 硬組織再生の新たな展開)
- チタン, アパタイトおよびアルミナに対する各種イオン注入の影響 : 骨芽様細胞の細胞生存率
- スパッタ法によって生成したチタン上のリン酸カルシウム様薄膜について : 骨芽様細胞の細胞生存率
- 脂肪族ビニルエステルを可塑剤とする多機能義歯裏装材の開発
- P-48 金属アレルギーに関する基礎的研究 : 2.ヒト唾液内での市販歯科用合金の溶出に関わる因子について(材料,一般講演(ポスター発表),第47回日本歯科理工学会学術講演会・総会)
- HeLa細胞のストレス蛋白質合成に及ぼす種々の化学物質の影響(in vitro)
- 金属アレルギーに関する基礎的研究 : 1. 市販歯科用合金のヒト唾液内での溶出および蛋白質結合について(歯科用金属・鋳造・腐食, 創立55周年記念大会平成17年春期 (東京) 第45回日本歯科理工学会学術講演会)
- 歯科臨床とアレルギー
- P2-117 マウス由来のES細胞による歯科用材料の発生に及ぼす影響について(動物実験代替法)
- 動的環境下におけるAg-Cu二元合金の溶出挙動について(in vitro)
- A-32 材料の免疫学的研究 : (1)モノクローナル抗体作製の試み
- 動的抽出における金属の組み合せの影響
- 無血清培養下における金属イオンの細胞毒性試験(in vitro)
- 無血清培養下における歯科用モノマーの細胞毒性試験(in vitro)
- チタンのぬれと初期細胞接着に対するUVオゾン照射の影響
- 3種類の貴金属合金を組み合わせた動的抽出が溶出と細胞生存率に及ぼす影響
- 内分泌撹乱物質を含まない高強度・高弾性・高靭性歯科用レジンの開発 : ウレタンジメタクリレート/メタクリル酸レジンの可能性
- 表面改質チタンの細胞適合性と細菌付着性
- P-50 チタンおよびチタン合金のぬれと初期細胞接着に対するUVオゾン照射の影響(細胞・組織・生体反応)
- リン酸4カルシウム・リン酸カルシウム2水和物・クエン酸硬化体の細胞毒性について (in vitro)
- ディッシュコンディショナーのモデル組成物の調製 : フタル酸エステル類の溶出動態
- ポリカーボネート樹脂製義歯床からの抽出液のエストロゲン様活性(in vitro)
- 4.鮭由来コラーゲンゲルを用いた3次元培養によるES-D3細胞のdifferentiationへの影響(一般口演,第3回日本再生歯科医学会学術大会および総会)
- 矯正床用光重合型レジンの細胞毒性 (in vitro)
- B-3 歯科材料の細胞毒性試験のための標準物質に関する研究(in vitro)
- 金銅二元合金の溶出に対する金含有量の影響
- A-4 マイクロ波による重合成型について(その1)
- 光線重合レジンの細胞毒性(in vitro)
- ヒト歯肉結合組織におけるデルマタン硫酸プロテオグリカン(デコリン)mRNAの発現
- 水銀に対する細胞の耐性発現について
- 9 水銀に対する細胞の耐性発現について (第440回 大阪歯科学会例会)
- バイオマテリアルに関する教育, 資格, そして職域の確立に向けて
- 細胞存在下における生体用金属材料の腐食とストレス蛋白質合成について (in vitro)
- A-28 材料の免疫学的研究 : 4.Niに対するモノクローナル抗体作製の試み
- P-25 材料の免疫学的研究 : 3.フェリチンおよびアポフェリチンに対するモノクローナル抗体の作製
- 「内分泌攪乱作用が疑われる, ビスフェノールAを主とする化学物質と歯科材料との関わりについて」
- P-24 各種歯科材料の抽出法による細胞毒性試験(in vitro)
- 歯科材料によると思われる接触皮膚炎 : 6年間にわたる調査結果について
- A-10 歯科用アマルガムによるストレス蛋白質誘導について(in vitro)
- A-1 細胞毒性評価におけるbiomarkerとしてのストレス蛋白質合成について
- 感染予防を目的とした中性および酸性水の金属に及ぼす影響について
- P-45 金属アレルギーに関する基礎的研究 : 3.歯科検査を目指した金属溶出について(歯科用合金, 第49回日本歯科理工学会学術講演会)
- P07.マウス由来ES細胞を用いた細胞分化誘導因子スクリーニング法の開発 : 懸滴液量ならびにEBs数について(一般演題抄録,第5回日本再生歯科学会)
- 脂肪族ビニルエステルを可塑剤とするアルコールフリー粘膜調整材の開発
- マウス由来のES細胞を用いた発生毒性試験法(EST法) : 懸滴液量ならびに可塑剤について
- P19.管腔様構造の形成に及ぼす金属元素の影響 : Zn,Cuイオンについて(一般演題(ポスター展示),第4回日本再生歯科医学会学術大会および総会 硬組織再生の新たな展開)
- 理工21世紀研究チーム1 報告「分子生物学と歯科理工学」
- P-49 多孔質チタン上での骨芽細胞様細胞の反応(細胞・組織・生体反応)
- リアルタイムPCR法を用いた細胞適合性評価の試み
- 補綴臨床からみた歯科用ゴム手袋について
- 最近の歯科用ゴム手袋の理工学的性質について
- アポトーシスの誘導からみた Bisphenol-A 評価
- エストロゲン様活性からみた新しい歯科用ポリマー - Bisphenol-A類似化学物質の場合 -
- 歯科用モノマーのエストロゲン様活性の測定 (in vitro)
- 新しいエンドポイントによる補綴用材料の細胞反応試験の可能性
- 超微粒子フィラー配合コンポジットレジンおよび支台築造用コンポジットレジンの細胞毒性 (in vitro)
- ES細胞を用いた市販小窩裂溝填塞材の発生毒性について
- 唾液モデルを用いた補綴材料の細胞毒性試験法の開発について
- P-75 金属化合物によるストレス蛋白質合成挙動について
- A-17 歯科用セメントによる細胞のストレス蛋白質 : MMA, リン酸, イタコン酸およびユージノール
- 矯正用プラスチックブラケットからの溶出液のエストロゲン様活性
- A-30 材料のアレルギー性評価 : 印象法のパッチテスト判定への応用
- 光硬化型セルフェッチングプライマー成分のエストロゲン様活性の測定 (in vitro)
- 歯科用モノマーの細胞毒性 : I.純度の異なるBis-GMAおよびTEGDMAの細胞毒性
- 人工唾液による歯科用金属の溶出と細胞回復度(in vitro)
- 細胞回復度からみた各種金属イオンの細胞毒性について(in vitro)
- 歯科生体材料によるアレルギーと歯科臨床の行方--岩坪・滝野論文に寄せて
- P-26 歯科用セグメントポリウレタン(Biotron^)の生物学的評価
- S100A4サイレンシングによる未分化間葉系幹細胞のオリゴマイクロアレイの解析
- フタル酸エステル類フリーの新しい粘膜調節材の開発
- 細胞培養環境下における貴金属系合金の溶出挙動
- 抽出法による歯冠補綴用材料の細胞毒性評価(in vitro)
- 8 抽出法による歯冠補綴用材料の細胞毒性評価 (in vitro) (第399回 大阪歯科学会例会)
- 動的環境下でのAg-Pd二元合金の溶出挙動とその細胞毒性について(in vitro)
- 非貴金属系合金を構成する純金属の細胞毒性について
- B-3 Short termテスト法(in vitro)による各種材料の細胞毒性評価法(第3報) : 材料形態について
- チタンと各種修復材料とを組み合わせた動的抽出による細胞毒性評価
- 代謝活性化を検出する in vitro測定法を用いた化学物質のエストロゲン様活性
- 歯科生体材料の教育ならびに研究開発
- 組織モデルによる細胞毒性試験の試み : TEST SKIN^について
- 歯周包帯剤が臍帯静脈内皮由来細胞による管腔様構造の形成に及ぼす影響
- B-24 材料の免疫学的研究 : 5.Niに対するモノクローナル抗体について
- 再び若い力に期待して : 歯科理工学の発展へ
- ES-D3細胞を用いた細胞分化誘導因子スクリーニング法の開発 : サイトカイン,ビタミン,BMP,Emdogain^[○!R],副腎皮質ホルモンの影響
- 動物実験代替法におけるES細胞利用の新しい展開
- 12.ES細胞による細胞分化誘導因子スクリーニング法の開発 : 外力が分化に及ぼす影響について(一般講演,第2回 日本再生歯科医学会 学術大会抄録集)
- ES細胞による細胞分化誘導因子スクリーニング法の開発 : Mouse Osteocalcin量について(第1回 日本再生歯科医学会 学術大会抄録集)
- P-74 グラスアイオノマーセメントの液成分のHeLa細胞に対する影響(in vitro)
- 3 HeLa細胞のストレス蛋白質合成に及ぼす種々の化学物質の影響(in vitro)
- P-41 HeLa細胞のストレス蛋白質合成におよぼす種々の化学物質の影響(in vitro)
- 歯科材料とアレルギー : 歯科医療従事者における職業性アレルギーの調査
- 各種ディスポーザブル手袋の理工学的検討
- 21.アルミナセメントに対するラットの歯髄組織反応(第1報) : 露髄歯について(日本歯科理工学会 近畿・中四国, 九州2支部共催学術講演会)
- 金属アレルギーの歯科検査システムの構築