老化促進モデルマウス (SAM) の初期行動発達について
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概要
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行動は, 生体が環境刺激との相互作用の結果として現わす最も統合的な機能である. そして, 行動の発生は, 生体の構造と機能の発生に依存した精神的発生であり, 身体発生が胎仔や新生仔における行動発生 (感覚と運動機能) を支配する重要な要因である. 本研究は, 老化促進モデルマウス (SAM) の身体発育と初期行動発達の過程を明らかにするとともに, 初期行動発達と身体発育および環境刺激作用との相互関連について, 行動科学的に検索したものである. 観察対象動物には, 著者らの研究室で維持・繁殖させているSAM-R/1系 (正常老化を示す, SAM-R/1//Odu) とSAM-P/8系 (不可逆的に進展する老化徴候の早期発現に加え, 加齢とともに学習・記憶障害を示す, SAM-P/8//Odu) マウスを用いた. 乳仔期 (生後0〜21日目) における身体発育過程の調査では, 次の所見を得た. 1. 体重の変化や体重増加率は, 両系統間で差がなかった. 2. 耳介展開, 発毛, 切歯萌出および開眼の外形分化時期は, SAM-R/1//Oduで2.9, 8.3, 10.1および13.7日, SAM-P/8//Oduでは3.3, 8.3, 10.3および14.3日であった. Reflex figure, functional activity, orientingなどの反射・運動に関する19項目, negative geotaxis testおよびbar holding testを指標とした行動発達過程の調査では, 次の所見を得た. 1. 両系統の行動発達過程は4期に大別できた. すなわち, rightingやpivotingなどの出生時の行動形態が完成する第I期 (生後0〜3日目), creepingやhead movementのピーク発現が観察される第II期 (生後4〜9日目), すべての運動がworkingで支持されるようになり, 初期行動発達にとって大きな転換期となる第III期 (生後10〜14日目) および運動能力が急激に発達し, 開眼を伴いそれ以前とは明らかに質の異なる運動形態が出現する第IV期 (生後15日目以降) に区分できた. 2. 第I〜III期の反射を中心とした過程では, 両系統間に大きな差がなかった. 一方, 第IV期では, SAM-P/8//Oduで全身性の協応運動能力が劣っていた. 3. SAM-P/8系マウスが生後8週齢で, 学習・記憶障害を発症することから, 両系統間における協応運動能力の差異は母性行動の変化によるものであることが示唆された. 以上の調査結果より, SAM-R/1系およびSAM-P/8系マウスの身体発育は両系統間で大きな差がなく, 他系統マウスとほぼ同様の経過をたどるが, SAM-P/8系マウスのもつ特有の行動変化の端緒は行動発達の初期過程にあり, 乳仔期の発育・発達過程における母獣の果たす役割の重要性が明示された.
- 大阪歯科学会の論文
- 1992-08-25
著者
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