ヒト歯髄グリコサミノグリカンの構成分子種と歯髄炎にみられる組成変化

概要

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ヒト歯髄のグリコサミノグリカン (GAG) の構成分子種と急性化膿性歯髄炎発症時にみられる分子種の組成変化を検討した. 実験には, 矯正施術における便宜抜去で得た健全歯の歯髄と, 臨床的に急性化膿性歯髄炎と診断され, 抜髄を必要と認めた罹患歯の歯髄を用いた. 炎症歯髄の乾燥重量当たりのGAG (ウロン酸) 量は, 健全歯髄の3.5倍に増加した. 健全歯髄と炎症歯髄のGAG分子種は共通で, デルマタン硫酸 (DS), コンドロイチン硫酸 (CS), ヘパラン硫酸およびヒアルロン酸から構成されていた. しかし, 炎症歯髄ではCSの割合が著しく増加し, 逆にDSの割合は低下した. 炎症歯髄の組織乾燥重量当たりのCS量は健全歯髄の6.1倍に増加した. また, GAGをコンドロイチナーゼAC消化して得られたCS由来の不飽和二糖を分析すると, ヒト歯髄にはΔDi-4SとΔDi-6Sの両者が存在し, 炎症歯髄のΔDi-4S/ΔDi-6S比は, 健全歯髄より高くなることが明らかになった. これらの結果は, 歯髄GAGの代謝活性が抜髄を必要とする急性炎症下でも生体防御的にシフトされることを示している.
大阪歯科学会の論文
1990-08-25