イエバエにおける有機リン殺虫剤抵抗性の生化学的機構
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概要
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イエバエにおける有機リン殺虫剤抵抗性の機構に関与するいくつかの生化学的要因について検討した.コリンエステラーゼ(ChE)の基質特異性に関しては, 抵抗性-感受性系統間に有意な差はなかった.しかし, 抵抗性系統のChEは感受性系統に比較して, 阻害剤に対する感受性が5∿29倍低かった.グルタチオンS-トランスファラーゼと, マラソンを加水分解するカルボキシルエステラーゼも抵抗性の機構に関与しており, とくに前者の場合は, 系統間にみられる活性の差は, 酵素の量的な差に基づくことが示唆された.一方, 薬物酸化酵素(MFO), リン酸トリエステル加水分解酵素, α-ナフチルアセテート加水分解酵素等の活性, およびチトクロームP-450のスペクトルについては, 系統間に有意な差がなかった.また, ^<14>C-マラソンのin vitroにおける分解代謝は, 主として, 核, ミトコンドリア, ミクロゾーム画分に存在するカルボキシルエステラーゼと, 上澄画分に存在するグルタチオンS-トランスファラーゼによることがわかった.本研究は, 有機リン殺虫剤抵抗性に関与するこのような生化学的諸要因を分析し, 組み合わせることによって, 交差抵抗性の現象や抵抗性の程度の違いを説明することが可能であることを示唆した.
- 日本農薬学会の論文
- 1980-08-20
著者
-
本山 直樹
Laboratory of Pesticide Toxicology Graduate School of Horticulture, Chiba University
-
Dauterman W
Chiba Univ. Matsudo Jpn
-
早岡 辰巳
(present Address)toxicology Program Department Of Entomology North Carolina State University
-
野村 健一
Laboratory Of Environmental Biology Faculty Of Horticulture Chiba University
-
ドウターマン W.C.
Toxicology Program, Department of Entomology, North Carolina State University
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