イエバエの一系統で発見された DDT 抵抗性とピレスロイド抵抗性間の負相関の機構
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
パキスタンで採集したイエバエ系統(PK)は, 標準的感受性系統(CSMA)と比べて, p, p′-DDTに抵抗性であるがピレスロイドには超感受性であり, 負相関関係を示した.局所施用した^<14>C-DDTの皮膚透過性, ミクロゾームによる^<14>C-DDTの分解, および神経のDDTに対する電気生理学的反応に関しては系統間に有意な差がなかった.一方, PK系の可溶性画分はGSH添加条件下でのDDE生産がCSMA系に比較して何倍も高く, DDT脱塩酸酵素によるDDTの解毒分解能力の増大がPK系におけるDDT抵抗性の機構であることを示唆した.PK系のピレスロイドに対する超感受性の機構については, 局所施用した^<14>C-フェンバレレートのin vivo動態の比較により, 皮膚透過性の増加とフェンバレレート代謝活性の低下という二つの要因の組合せに基づくことが明らかになった.フェンバレレート代謝活性の違いは, in vitroにおける解毒分解実験の結果から, PK系のチトクロームP450モノオキシゲナーゼ系のピレスロイド分解活性が低いことに由来することが推察された.同酵素の阻害剤であるピペロニルブトキシドによる共力効果がCSMA系で大きく, PK系で小さいということもこの推察を支持した.PK系で見られたDDT抵抗性とピレスロイド抵抗性の間の負相関関係はおのおの独立したメカニズムによってもたらされていることから, 真の負相関ではなく, みかけの負相関関係であるといえる.
- 1994-08-20
著者
-
本山 直樹
Laboratory of Pesticide Toxicology Graduate School of Horticulture, Chiba University
-
MAHMOOD Tariq
Laboratory of Pesticide Toxicology, Faculty of Horticulture, Chiba University
-
Mahmood Tariq
Laboratory Of Pesticide Toxicology Faculty Of Horticulture Chiba University
関連論文
- プライマー伸長に基づくジェノタイピングによるアカイエカ種群蚊の亜種と殺虫剤抵抗性遺伝子の同時識別
- ケナガコナダニの ATPase 活性と殺ダニ剤による活性の阻害
- イエバエの成虫に経口投与したシロマジンが生殖と次世代の発育に及ぼす影響
- イエバエの一系統で発見された DDT 抵抗性とピレスロイド抵抗性間の負相関の機構
- チャバネゴキブリのピレスロイド抵抗性機構に関する in vitro 研究
- ニンニクの貯穀害虫に対する忌避効果
- チャバネゴキブリのピレスロイド抵抗性機構に関する in vivo 研究
- いわゆる天然・植物抽出液製剤に合成殺虫剤が混入されていることの追加証明
- イエバエにおける有機リン殺虫剤抵抗性の生化学的機構
- チャバネゴキブリにおけるピレスロイド抵抗性の遺伝
- メタノール-リン酸抽出による黒ボク土におけるクロルピリホスの測定
- ピレスロイド抵抗性イエバエにおけるフェンバレレートの in vitro および in vivo 代謝
- ピレスロイド, 有機リン剤抵抗性イエバエにおけるフェンバレレートおよびダイアジノン代謝に関与するチトクローム P450 モノオキシゲナーゼ系の基質特異性