システムの異常の原因探索問題への一つのグラフ理論的接近法
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概要
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システムの異常の原因探索問題にはいろいろな型のものがあり、またいろいろな接近法が提案されているようであるが、本論文では、システムを"枝に正負の符号のついた有向グラフ"という構造でモデル化し、その有向グラフ上の言葉で問題の定式化と解法を確立することを提案する。このグラフ理論的接近法は、予め起こり易い異常の型を想定しておくということをせず、システムの構造そのものと観測された異常現象とだけから、いかなる型の異常に対しても、理論的に可能な範囲で異常原因の箇所をつきとめることができるという特長を備えている。ただ、"すべての状態量を観測できる"のでない限り、原因探索アルゴリズムの中に"組合せ的に可能性を列挙して調べる"という部分が含まれるため、実用規模の問題に対して実用的な時間内に処理を終るようにするためにはアルゴリズムに各種の細かな工夫を凝らさなければならない。このような実用化実験も現在行ないつつあるので、近々適当な方法で公表する予定である。本論文で提案されている接近法の主たる着想は以下の通りである。システムの構造を、その状態量を点に、状態量の間の直接の影響関係を枝に、それぞれ、対応させた有向グラフで表わし、さらに、各影響関係が「原因量の増大が結果量の増大をもたらすように影響するか減小をもたらすように影響するか」に従って、対応する枝に正あるいは負の"符号"を与える。状態量が正常値と認められる範囲内にあるか、それより大きいか。小さいかに従って、各点に0、正、負の符号を与えると、それらの点の符号と有向グラフの枝の符号とから"異常伝播の経路となりうる枝の集合"が定義できる。それらの枝のみからなる部分(有向)グラフの極大強連結成分の中(の点に対応する状態量が関係する装置)に、異状の原因が存在していると推定することができる。すべての状態量ではなくその一部のものしか観測できない場合でも、「異常の原因は1箇所しかない」という仮定をおくことによって、原因箇所を特定できる。すなわち、非観測点の符号のあらゆる可能な組合せをすべて調べて、その中で"異常伝播経路を表わす部分グラフ"の極大強連結成分の数が唯1個となるようなもののみを残せば、それらが考えうる異常の原因およびその伝播経路を表わしていることになる。(この際、アルゴリズムの能率向上のために各種の工夫が必要である。)
- 社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会の論文
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