女子学生の保健学的研究(第3報) : 月経随伴症状の実態とその対応について
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概要
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1.月経随伴症状の有無は, 昭和56年度から60年度の5年間(以下略して5年間とする)は, 全期間「有」93.3%, 「無」6.7%である。月経前の随伴症状「有」68.9%, 「無」31.1%である。月経中においては「有」87.7%, 「無」12.3%である。月経後は「有」6.5%, 「無」93.5%である。2.昭和45,55,60年度の随伴症状の有無を比較すると, 「有」全期間・15年間で5.9%の減少, 月経前4.6%の減, 月経中3.9%減, 月経後は0.9%増を示した。3. 昭和60年度18歳齢の月経随伴症状の有無の比率は, 昭和45年, 55年度全九州大学女子体育研究会資料の, 何歳時の出現率に匹敵するかをみると, 45年との比較では14〜15歳, 55年度では, 15〜16歳に該当していることがわかった。近年における18歳齢は, 性的成熟度が遅れていることが明らかに認められ, 15年前よりも3〜4年, 5年前より2〜3年程度の性成熟の遅れが顕著に示された。4.月経随伴症状の内容は, 月経前における特徴として, 下半身の訴えに加え, こしけ, 乳房の張り, にきびができるなどが2〜4割出現している。月経中では, 下腹部痛4〜6割に加えて, 全身のだるさ, 疲れやすい, 集中力がにぶるなど, 生活行動上に何らかの支障を来たしやすいと思われる身体, 精神両面の全身的症状が顕著である。月経後での特徴的なこととして, 約5割以上の者が, こしけがあると訴えているとともに, 全身的な症状がひきつづき自覚されるものもいる。以上の全期間をとおしてみると, 約5〜8割の者が下腹部が痛い, 重苦しい, 張る, こしけがあるなどの下半身の愁訴をあげ, また, いらいらする, ゆううつになる, 不快になるなどの精神的, 情緒的不安定を示したものが3割以上いる。月経随伴症状の訴え率を期間別に見ると, 月経中の訴えが最も多く, 次に月経前となっている。月経後の比率は, 両期間よりも著しく低い。以上のとおり, 月経前, 中, 後には, いずれの期間も, 身体的および精神的変化がみられ, 特に月経前と, 月経開始直後には, 神経的緊張や, 情緒的不安定を伴っていることが示された。女性は, 一カ月のうち約10日間は, これらの生理現象を体験しているので, この時期の過ごし方について個別指導が必要であり, 特に自覚症状の強い者に対しては, 充分な配慮がのぞまれる。5.月経随伴症状の処置の有無をみると, 本調査の5年間では, 随伴症状「有」93.3%の者のうち, 「処置をとっている」と答えた者は36.6%, 「とっていない」は63.4%である。これは随伴症状を訴えていても, 症状軽減のための処置をとらずに過ごしている者が大半であることを示している。18歳齢の「処置をとっている者」について, 昭和55年と本調査の結果を比較してみると, 55年13.0%, 60年28.9%と, 60年の方に15.9%増加していることがわかる。また, 顕著な特徴として, 55年(13.0%)と56年(38.9%)の一年間に, 「処置をとっている」者の割合が, 実に25.9%増加し, しかも両年間に一つの大きな断層が認められた。この現象については, 今後の検討課題として, ひきつづき注目していきたい。6.処置の内容の5年間の傾向は, 「薬の服用」3割強, 「睡眠をとる」2.6割, 「安静にする」約2割, 「軽い運動」「保温」「マッサージ」などの順である。18歳齢について, 昭和55年調査と60年度の結果を比較してみると, 「薬の服用」は55年(65.3%), 60年(32.1%)と, 大幅に33.2%の減少率を示し, 「安静にする」「睡眠をとる」「運動をする」「マッサージをする」などの処置の内容の比率が変化して, 増加している。近年次における処置の対応に大きな変化が生じ, 薬品に頼る傾向から, 各個の身体状況に応じた月経中の過ごし方の工夫が, 多様にとり入れられていることがわかる。顕著な特徴として, 55年と56年度の年度間に特異な現象がみられ, 「薬の服用」55年65.3%, 56年30.9%と, その差34.4%の大幅減となり「睡眠をとる」「マッサージをする」などの比率が増加している。この年度間を境に, 処置の内容の変化がみられたことは, 特筆すべきことである。7.薬の使用状況の5年間をみると, 「薬を使用している」2.5割強, 「使用しない」7.5割弱である。使用している薬は, 売薬品がほとんどで, 特に「バッファリン」5割弱, 「セデス」2.6割などである。また, 医師より処方された薬品を使用している者は, わずか1.6%であった。
- 1988-01-25
著者
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