女子学生の保健学的研究(第4報) : 月経随伴症状が体育実技におよぼす影響
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概要
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1.月経時の過ごし方は, 昭和56年度から60年度の5年間(以下略して5年間とする)の平均は, 平常どおりに生活している者が6割強, 特に何も対策をとらずに我慢をして, 過ごしている者約2割である。約87%の者が月経に遭遇しても不断と変らぬ生活をしている。2.月経随伴症状が, 体育実技授業に与える影響の5年間は, 休まないもの約9割である。ただし, 時々休む・見学するという者約1割である。このことから, 指導上の配慮を必要とする者が常時いることがいえる。昭和45,55,60年度18歳齢の15年間の比較では, 休まない者45年72.8%, 55年83.9%, 60年90.8%と, 年次を追いながら, 18.0%の大幅な増加傾向が認められた。時々休む・見学する者は, 15年間で約6%の減少を示している。近年体育実技参加に対して, 積極的な対応がとられていることがいえる。このことからも, 処置の取り方に大きな変化が生じ, 薬品に頼る傾向から, 各個の身体状況に応じた月経中の過ごし方の工夫がなされていることがわかる。3.月経中の体育実技参加による身体的変化の有無の5年間は, 変化ありと答えた者24.6%, ないと答えた者75.4%である。身体的変化の内容を, 5年間をとおしてみると, 「運動実施後の症状」の顕著な例として, 経血量がやや多くなる者約半数である。次に腹痛がひどくてつらい者4人に1人, 腰痛がひどくてつらい5人に1人, また, 下腹部に激痛がしてくる6.5人に1人である。「月経の期間」では, 長くなる, 短かくなる, 不定となる, 1日位止ってまたあると, わずかながらも変化を示しているが, 期間への影響はほとんどないことがわかった。「動作」の顕著な例としては, 動くのも嫌になるは3人に1人, 鈍重になる5人に1人, 不自由でしかたなくなる者は10人に1人である。「疲労度」は, すぐ疲れてくる, 非常に疲れると訴える者2人に1人である。「食欲」としては, 食欲が減退すると答えた者5人に1人である。以上のことから, 身体的変化としての顕著な順位は, 経血量がやや多くなる約5割, すぐ疲れてくる, 動くのも嫌になる約3割強, 次いで腹痛がひどい, 腰痛がひどくてつらい, 鈍重になる, 食欲が減退するは約2割強, 下腹部に激痛がする, 非常に疲れる, 不自由でしかたがないは約1割〜1.5割である。30年度調査で特筆すべきことは, 経血量が増す者7割以上, 期間が長くなる, すぐ疲れてくる, 痛みが増すなどは半数の者である。食欲の減退, 不自由でしかたがない, 鈍重になるは2〜3人に1人の割合であった。このことは, 運動参加による身体的変化が著しいことを示している。昭和30年度と本調査を比較してみると, 期間が長くなる5割強の減, 不自由でしかたない約3割減, 経血量を増す, 痛みを増す, 食欲が減退するが約2.5割減, 鈍重になる1割減と大幅な減少傾向である。それとは逆に, 30年度より本調査の方に訴え率が高くなっている身体的変化は, 動くのも嫌になる16.1%増, 疲労が甚だしく貧血をおこす3.7%増と, この2点が顕著であった。以上のとおり, 本調査よりも30年度の体育・運動参加による身体的変化が, 痛み, 量, 期間, 動作, 疲労度, 食欲の全領域にわたって顕著である。4.月経中の体育実技参加による精神的変化の有無の5年間は, 変化ありと答えた者20.1%, ないと答えた者は79.9%である。精神的変化の内容を, 5年間をとおしてみると, 顕著な順位は, 次第にゆううつになる, 不愉快になってくる, 少しも熱中できない, 無気力になるなどが4〜5人に1人, 精神的疲労が増す, 気分が不安定になる, だんだん消極的になる, 時々ぼんやりする, いらいらしてくるは6〜7人に1人の割合である。月経中の体育実技参加による身体的・精神的変化(5年間-18歳)の傾向をみると, 月経中の身体的・精神的変化のある者は, 近年次にむけて下降現象を示している。次に身体的・精神的変化なしの者は増加現象を示している。近年においては, 月経中の体育実技参加による身体的・精神的変化のある者1.5割〜2割, 変化なしは約8割前後である。日常生活に差障りのない健康体の学生でも, 随伴症状による身体的・精神的変化はかならずしも皆無とはいえず, 個々それぞれの状況に応じて, 工夫をしながら過ごしていることを, 指導者は見逃してはならない。5.月経中の体育実技参加による生理用品・手当の問題点は, 近年次によると, 問題点がある者が約3割と増加傾向を示している。このことは, 指導上注目すべきことである。問題点がない者は, 約7割で減少傾向である。特に問題点があるのは, ずれやもれの約7割である。次に, 取りかえ時間, 多血量, 外見で気付かれる, 激しい運動の時などは約1割前後である。6.水泳時の月経対策としては, 見学するが圧倒的に多く8.5割以上である。次にタンポンを使用する約1割前後, 対策なしで泳ぐ, 少量時は泳ぐである。以上のことから, 水泳時の月経対策の留意点として, 対策なしで泳ぐや, 少量時は泳ぐという者について, 衛生管理上充分な保健指導を必要とすることが示された。
- 1989-01-25
著者
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