ミナミアオカメムシの2種の卵寄生蜂の働きあいと寄生率
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概要
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ミナミアオカメムシの2種の卵寄生蜂Asolcus mitsukuriiとTelenomus nakagawaiの働らき合いを1961〜'62年にわたる野外調査の結果から解析した。朝来地方における寄生の第1世代では, 2種の共寄生卵塊からは期待される以上にAsolcusがTelenomusにくらべて多く羽化し, Asolcusの平均羽化数(寄生卵塊あたり)はTelenomusのそれより有意に多かった。しかし寄主の第2世代にはこのような傾向はみられない。また両種とも寄生卵と非寄生卵を識別する能力がよく発達しているらしく過寄生現象はみられなかった。とくに寄主の第1世代には寄生蜂の種類と被寄生卵塊の大きさの間には, (1)Asolcus(単独寄生と共寄生卵塊を含む), (2)Telenomus(単独寄生と共寄生卵塊を含む), (3)共寄生卵塊のみの順に卵塊の平均の大きさは増大するが, 逆の変異係数にこの順に減少する。この傾向は寄主の第2,第3世代にはあまり顕著でないがこれはこれら世代における卵塊の大きさの増大とも関係しているようである。以上の事実は寄主の第1世代に両種間にかなり直接的な干渉作用が存在することを示唆する。両種が同一寄主卵塊に共存する度合いをCOLE(1949)の係数(Coefficient of interspecific association)を用いて計算しその結果を考えうる両種の種間競争の機構-Asolcus♀成虫が攻撃的行動でTelenomus♀成虫の産卵行動を妨害する-から論じた。寄主第2世代における両種の寄生率は第1世代にくらべていちじるしく低下するがそれは寄主とこれら寄生蜂の分散能力の相違に原因するものと思われる。ミナミアオカメムシとアオクサカメムシが共存する合川地方では朝来地方のようなミナミアオカメムシの単棲地帯と異なり, Telenomusの寄生率がAsolcusのそれよりはるかに高い。このことは両地間の気候的条件(主として気温)の差にもとづくと考えられる。また合川地方では寄主の第1世代にはいちじるしい種間競争はみられないようである。これらのことから寄生蜂の増殖放飼によるミナミアオカメムシの生物的防除の可能性は種間競争のいちじるしい寄主の第1世代よりも寄主の密度に対して寄生蜂の密度が低下し種間競争もみられない寄主の第2世代に期待しうる。
- 1963-09-30
著者
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