ニカメイチュウの大発生において見られた大発生年の遠心的ずれと地域的広がり
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概要
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これまでニカメイチュウの大発生を問題とする場合, その地域的広がりと発生年の同時性の規定があいまいであった。1953年に西日本全域にわたって見られたニカメイガの大発生を九州各地の30ヵ所から集めた大発生年を中心とする長期の誘ガ成績に基いて解析を行なった。各地の誘殺曲線の年次変動からうかがえる大発生には同一県内の観測地点間でも一致を示さなかった。これを地図上に示すと九州西北部(有明海沿岸地帯)では佐賀県を中心として隣接諸県に発生年および世代に時間的ずれを見せて遠心的に波及していることが認められた。しかし九州のほかの地域ではかならずしもこの期間に大発生が認められず, 地域的にも九州西北部の大発生はそれ自身の地域的限定性を持っていることが認められた。九州西北部の大発生の中心と見られる佐賀県城田および佐賀市の大発生の直接的原因は気候・耕種条件(肥料解禁など)があずかったと思われるが, 中心点からの遠心的かつ連続的な大発生の広がりは, 成虫の集団飛しょうにうよる他地域への侵入が最も有力なものと考えられる。またこときの大発生に伴った特異な現象は性比(♀/♂+♀)が非常に高く, 大部分の場所で少なくとも2世代以上にわたって1%の危険率で各地点の1,2化期別の平均性比より有意に高い価を示した。また有意な最低性比はほとんど大発生の終熄世代もしくはその前後の世代に観察された。大発生の終熄世代は, 大発生世代ほどには顕著でないが, 大発生の中心より離れるにしたがい同様に時間的にずれを示している。1952年には佐賀市でイネに大被害を与えた2化期幼虫が集団移動して通常の寄主植物ではないメダケ, タカナ, 大根, さといもなどを加害するのが観察された。
- 1962-03-30
著者
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