摂食と産卵に関係したミナミアオカメムシの移動
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概要
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多食性の昆虫における寄主植物の意義の明らかにするため, 1961=1965年にわたってミナミアオカメムシ成虫の行動を寄主植物との関連においてしらべた。成虫の行動から寄主植物は摂食対象と産卵対象植物に区別される。越冬場所から飛来した成虫はナタネ, ダイコン, コムギ, ハダカムギなどで摂食, 交尾し, 卵巣成熟した雌は別の産卵対象となる寄主植物に移動する(例えばバレイショ)。これらにおける成虫個体群の性比は性的成熟と共に減少することはこれを裏付ける。一方産卵対象となるバレイショ畑では, 初期に移動して来る成虫の密度はきわめて低くほとんど雌ばかりで, この時期に大部分の卵塊が産まれる。またこれらの雌は後期に侵入してくる成虫にくらべて滞在時間が著しく短い。このことはナタネなどの摂食植物上で卵巣成熟した雌がバレイショなどの産卵植物に移動し産卵が終ると再び摂食植物に戻ることを暗示している。バレイショの発育が進むにつれて多くの成虫が摂食, 交尾のために飛来するようになる。このように寄主植物の発育の前期は産卵の対象となり, 後期に摂食の対象となる現象はかなり一般的にみられ, 第2世代成虫と晩期稲との間にも明確にみられた。以上のことは, 多食性の成虫は無差別に多くの植物種を同時にえらぶのではなく, その生理的条件に応じて寄主植物の種類や発育のステージに敏感に反応しうる強力な寄主選択能力をもつことを示す。したがって多食性昆虫の寄主植物は個々について昆虫の行動, 生活環との関連において評価されなくてはならない。
- 1965-12-25
著者
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法橋 信彦
農環研
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中筋 房夫
九州大学農学部昆虫学教室
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桐谷 圭治
和歌山県農業試験場朝来試験地
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木村 勝千代
和歌山農試朝来
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法橋 信彦
和歌山県農業試験場朝来試験地
-
木村 勝千代
和歌山県農業試験場朝来試験地
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