野外網室におけるミナミアオカメムシ成虫の生存率と生殖能力
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概要
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2m^3の網室4個を水稲圃場内に設け, 5令幼虫を収容して, 羽化成虫雌71,雄65について日令別産卵数, 生存率, 不妊率をしらべた。調査は3日間隔でおこない成虫には個体識別をほどこした。卵は調査ごとに計数して取除き, 個体ごとの生死, 交尾行動を記録した。産卵と交尾の関係を網室と同じ世代の成虫, すなわち15対(第1世代), 27対(第2世代)を使用して毎日しらべた。網室内の成虫寿命は雄18.7±14.2日, 雌27.5±19.2日, 実験室内では雄36.6±10.9,雌45.4±12.2で前者は後者の約半分であるが, 変異係数は逆に約2倍に達する。網室内での生存曲線は初期に高い死亡がみられるが, それ以後は約60%が死亡する時期までほぼ一定で, 最後に日令とともに急激に死亡がおこる。羽化前後の死亡率は5令期中に10%, 羽化直後の期間に13.4%と見積られた。成虫の性活動には個体間に大きな変異がみられ, 雌雄とも半数以上の個体間は交尾行為が観察されなかったが, 雄では10回中7回, 雌では11回中4回も交尾中であったものもふくまれている。雌の交尾行動は産卵と密接な関係があることから, 実験室内でえられた雌の交尾頻度と不妊率の関係を使用して野外網室内の雌の不妊率を推定した。その結果雌の33%は産卵前期間中に死亡し, 10%は寿命や外観上から正常個体と区別できないが, 生理的原因による不妊雌と推定された。産卵雌のうちよく産卵するものは少くとも3卵塊を産む。雄のなかにも雌と同じ程度に性的に弱い個体があることも交尾頻度から推察される。高密度条件で平均産卵数が減少することは広く知られているが, これはたんに1雌当りの産卵数の減少と考えるべきでなく, 産卵雌当りの平均産卵数の減少とあいまって不妊雌率の増加も考えあわすべきである。生命表からえられた卵より成虫羽化までの死亡率と, ここでえられた日令別産卵数, 生存率を使用して世代当り増加率(R_0)を計算すると第1世代の減少が, おもに早期水稲で成育する第2世代の高い増殖率によって補償されている。発育期の死亡率が97.57%のときは個体群密度は世代間で平衡を保つ。ことなる発育期間および死亡率を仮定したときの自然増殖率(r)の価を他の昆虫のそれと比較するため示した。
- 日本応用動物昆虫学会の論文
- 1963-06-15
著者
-
桐谷 圭治
高知農技研
-
法橋 信彦
農環研
-
桐谷 圭治
和歌山県農業試験場朝来試験地
-
木村 勝千代
和歌山農試朝来
-
法橋 信彦
和歌山県農業試験場朝来試験地
-
木村 勝千代
和歌山県農業試験場朝来試験地
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