咬合調整後のクラウンの咬頭嵌合位における咬合接触
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概要
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クラウンの咬合調整の目標は, 咬頭嵌合位で歯列全体として均等に咬合接触させること, 側方滑走運動時, 前方滑走運動時にはクラウン装着前の歯列としての咬合様式を変化させないこと, そしてクラウンに隣在歯と類似した咬合接触点数, 咬合接触面積, 咬合接触部位をもつ咬合接触関係を設定することである.現在, クラウンは間接法で作製すると, 鋳造後に咬頭嵌合位で200〜300μm高くなる.しかし, 咬合紙とバー, ポイント類などによる咬合調整を咬頭嵌合位についてだけ行えば, 数μmの精度でクラウンを正しい高さに調整することは可能である.そこで, 実際臨床において側方滑走運動, 前方滑走運動での咬合調整を行った後のクラウンが咬頭嵌合位で歯列に対して数10μm以内の精度で咬合接触点をもち, クラウンの各咬頭が咬合接触点をもっているかを検討した.被験クラウンは10名の患者の上下顎臼歯10歯に作製した.クラウンの咬合調整は臨床で通常行われている方法, すなわち視診, 患者の感覚, 咬合紙の引き抜き試験, 咬合紙の咬合接触像を指標として合着時前まで通法により行い, 咬合調整終了後の咬頭嵌合位での咬合接触状態の判定にはシリコーンブラック法を用いた.なお, 10被験例中の3例については咬合接触像に関する解析を行った.各クラウンの試適時, 仮着時, 合着時と装着1週後に咬合紙とシリコーンブラックによる咬合接触像を採得し, マイクロスコープとビジュアルスケーラーによって各種の検討を加えた.その結果, 咬合接触部位は咬頭の斜面あるいは辺縁隆線部に見られ, 咬合接触点は咬合調整時に作られた咬合小面内のシリコーンブラックが示す咬合近接域に限定されていた.また, 咬合接触点をもたない機能咬頭もあった.咬合調整の過程で, 咬合接触点数は次第に増え, 接触面積は狭くなった.結論として, 以下のことが明らかとなった.1.咬頭嵌合位において, クラウンの各咬頭に咬合接触を求めることは, 必ずしも容易ではなかった.2.咬合近接域の咬合接触に関する評価が必要である.
- 日本顎口腔機能学会の論文
- 1998-03-31
著者
-
長谷川 成男
東京医科歯科大学補綴学教室
-
栗山 實
東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 口腔機能再構築学系 摂食機能保存学講座 摂食機能保存学分野
-
大竹 貫洋
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 口腔機能再構築学系 摂食機能保存学講座 摂食機能保存学分野
-
長谷川 成男
明倫短期大学歯科技工学科
-
笠原 健一
東京医科歯科大学歯学部歯科補綴学第二講座
-
田中 義浩
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
-
栗山 實
東京医科歯科大学歯学部歯科補綴学第2講座
-
長谷川 成男
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 口腔機能再構築学系專攻 摂食機能保存学講座 摂食機能保存学分野
-
大竹 貫洋
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔機能再構築学系専攻摂食機能保存学講座摂食機能保存学分野
-
田中 義浩
東京医歯大 大学院医歯学総合研究科 口腔機能再構築学系 摂食機能保存学 摂食機能保存学分野
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