長期無施肥水田土壌における二三の植物養分の動態について
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概要
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本報告は長期の無施肥無農薬栽培(28年継続)の水田土壌における二三の植物栄養分の動態を四年間調査研究した結果である。当該水田における水稲の収量は施肥による通常栽培に対して7割近くに安定化して未ているといわれ,その栽培での特徴は灌がい用水を可能な限り掛け流しにすることである。調査検討した点は以下のように要約することができる。1.無施肥田土壌中の全窒素は,1OOg土壌当り平均130mgNを示し,年々減少傾向を認められない。また,その全窒素量は、水稲の生育時期においても変動し,その大きさは,38.8%の変動係数として示すことができた。なお,水田内の調査位置によっては,水口部で高く,水尻部で低い値を示した。2.無施肥田上壌の水溶性窒素は,全窒素の0.6%未満で,大部分はアンモニア態窒素であった。さらに一規定塩酸溶液可溶アンモニア態窒素は,サンプル時期によって変動があるが,水稲の生育旺盛期においてはいずれの位置においても作物体内の窒素量に匹敵する場合が多い。3.これらの土壌の水溶性リン酸量は水稲の生育初期に多く,後期に減少する傾向を示した。一規定塩酸可溶性リン酸量は、同処理のアンモニア態窒素よりも多量の場合が多く,7月上旬から急激な減少傾向を示した。4. 7月初句に無施肥田に流入する灌がい水中のアンモニア態窒素は0.29ppm,リン酸は0.09ppmの平均値を示し,純農村型灌がい水としては窒素,リン酸,ケイ酸, Mg, Kなどは多少高く,Caは低い値を示した。無施田の水口より水尻に向って用水中の諸成分量は減少傾向を示した。これは無施肥田内の水口域あるいは上流域で諸成分の沈降,吸着,水稲による吸収などを明らかに示すものである。5.水口より水尻へ流連する用水中の成分量の減少は,水稲生育の盛んな時期に顕著であり,また,Me, K, NaなどよりCa,NH_4-N,P_20_5などで著るしい減少が示された。6.無施肥田土壌より溶出するCa量は時間の要因より,土壌溶液比の違いによる影響が大きい。土壌のCaの吸収量は対応する溶存アニオンの違いによって異なった。灌がい水中の3倍量のCa濃度処理では,いずれのカルシウム塩処理においてもCaの吸収割合は著しく増加した。
- 近畿大学の論文
- 1979-03-15
著者
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