リン酸ニアンモニウム処理によって土壌に吸収させたCdの溶出と吸収Cd形態の関係

概要

論文の詳細を見る
本研究は,上壌のCd吸収におけるリン酸の関与を明らかにする目的でCd,リン酸,アンモニウムを吸収させた上壌に対して,3種類の溶液により連続抽出を行ない,溶出成分の相互の開通を検討したものである。得られた結果は以下のようである。Cd吸収上壌へのリン酸ニアンモニウム処理は,吸収Cdの溶出をいずれの通続溶出液操作に対しても明らかに抑制した。各抽出溶液中のリン酸,アンモニウムとCdの関係は供試した各土壌に対して一定の傾向が認められない場合が多い。土壌中の腐植含量は,無処理区はもちろんリン酸ニアンモニウム処理区においても,Cdの土壌吸収力に大きな影響をもたらした。腐植含量の少ない土壌は,著るしいリン酸の溶出が認められないにもかかわらず,吸収Cdの溶出が顕著に認められた。これらの結果はリン酸が直接関与しないCdの吸収を暗示した。吸収Cdの溶出量は,溶出平衡液のpHと密接であり,各土壌とも強酸性域で多く,中性に近づくにしたがい急減し,pH6〜7附近で最低値を示した。リン酸ニアンモニウム処理区は,溶出平衡液のpHを高く維持した。そのために吸収Cdの不溶化は土壌の緩衝能に強く依存するものと考えられる。
近畿大学の論文
1978-03-15