1粒系コムギの早生系および晩生系における花成と成長反応の比較生理学的研究(II) : ポット栽培における早生系と晩生系の花成と成長反応

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1粒系コムギの早生糸および晩生糸をポット内で砂耕栽培し,異った日長刺激,温度条件および外部から与えたジベレリン(GA)に対する花成および生長反応を比較した。1.自然日長を異ったワット数の白熱電球による終夜照明によって長目(連続光)にすると,早生系の花成は2cp〜60Wの電球照明の範囲でまったく同程度に促進された。これに対して,晩生系では終夜照明の光の強さの増加に伴い顕著に花成が促がされ,60W光源の場合には早生系と等しい花成状態に達し早生と晩生の差は示されなかった。2.長日(連続光)刺激は,早生系では4週間,晩生糸では6週間与えたときに花芽の分化促進のピークに達したが,さらにそれ以上の長日を与えると両系統共に茎の伸長や花芽の発達が促進された。また,コムギ類の主軸葉数は,その花芽分化と共に決定され,茎の伸長は上部の節間伸長によって起るので,ロゼット葉数は花成反応の早さを示す1つの目安となる。花成促進のピークにおける早生糸のロゼッド葉数はおよそ3、晩生系のそれは5であった。3.長日および高温は一般に1粒系コムギの花成を促す。しかし,長日と高温により早生系では花成促進がみられるが晩生系では未だまったく花成がみられない時期において、葉の生長は,両系統共に普遍的に促進された。ただし,同じ日長と温度条件では、早生系の茎葉の長さは,晩生系よりも常に大であった。4.外部から与えたGAは,本実験の範囲では,単生系と晩生糸の花成を促進しなかったが,茎葉の伸長は明らかに促した。そしてこのような促進効果は,発育段階,日長および早晩性に無関係であった。5. 1粒系コムギの地上部の伸長は,高温,長日刺激,遺伝的早生およびGA処理により促進される。特に後の3者の要因にもとずく伸長促進を,もっとも典型的な葉鞘部長について相互に比較した。その結果これら3要因は,かのかの独立的、加算的に働いて伸長促進をすることから,長日刺激と遺伝的早生は,いずれも体内のGA量を増加または活性化することにより,茎葉の非特異的な伸長反応を促すと考えられる。6.長日,高温,早生要因およびGA処理は、葉鞘部長の伸長を促すと共に、その葉鞘軸の地面に対する傾角を増加させる。すなわちロゼット型から直立型への生育型(growth form)の変化をまねく。このような屈性の変化は,上記の外的,内的要因により,植物体内のGA量の増加または活性化を通じておこるのであろう。以上の結果は,1粒系コムギの花成や生長,屈性反応が,外的,内的条件により,植物体内で生産または活性化されるGA景を通じて,特異的および非特異的に,コントロールされていることを示唆している。
近畿大学の論文
1978-03-15

1粒系コムギの早生系および晩生系における花成と成長反応の比較生理学的研究(II) : ポット栽培における早生系と晩生系の花成と成長反応

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