原産地を異にするタルホコムギの開花習性について
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概要
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タルホコムギはDDゲノムをもち,現在の普通コムギ(パンコムギ)AABBDDの野生の祖先の1つであることが知られている。1955年京都大学カラコルム・ヒンズクシ学術探険(隊長,木原均)が行われ,パキスタン,アフガニスタン,イランを中心に,コムギおよび類縁植物の採集調査がなされた。筆者らは,京都大学在籍当時,そのうちのタルホコムギ数系統の種子の提供をうけ,比較開花生理研究を行ってきたが,今回は,それらの原産地と,開花習性との関係について次のような結果を報告した。1)低温処理・短日処理(8・h日長),長日処理(連続光)などに対するこれら諸系統の開花反応は,比較的変化に富み,このことから,コムギの祖先としての古さが,その適応的な変異性において,裏ずけられる。2)開花促進を花芽分化の速さ-主軸葉数の減少ではかると,一般に北から南への緯度的分布との相関がみられた。3)生育型(growth habit)でみると北方のイラン,アフガニスタンのグルーブは冬コムギ型,南のパキスタンのグルーブは春コムギ型にみえる。しかし,後者は,必ずして典型的なものでなく,低温を全くうけないと短日によって開花が促され,長日によって抑制される。4)これらの,日長に対する特異な反応は,生育地の気温,降水量のパターンと日長との,短い生育期間における関係によって,ある程度説明される。
- 近畿大学の論文
- 1972-03-15
著者
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木村 和義
Inst. For Agricultural And Biological Sciences Okayama University
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杉野 守
近畿大学農学部農学科植物生理学研究室
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杉野 守
Lab. of Plant Physiology, Dept. of Agriculture, THE FACULTY OF AGRICULTURE OF KINKI UNIVERSITY
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九重 啓二
Lab. for Reproductive Biology, School of Medicine, University of N. C. U. S. A.
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九重 啓二
Lab. For Reproductive Biology School Of Medicine University Of N. C. U. S. A.
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