「宗教被害」と人権・自己決定をめぐる問題
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概要
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本稿では,人権・自己決定権という世俗的理念がどのようにして宗教制度の領域に介入するようになっていったのか,その時代背景や社会的要因を現代の『カルト』問題や,『宗教被害』をめぐる裁判を通して記述していきたい。現代の『カルト』問題は,特定宗教や宗教の暴力的側面に関わる問題に留まらない。<BR>教団の特殊な勧誘・教化行為や宗教活動一般を社会がどのように許容するのかという問題としても出現している。<BR>カルトによるマインド・コントロールというクレイムは,信者の宗教的自己決定権が侵害されているという評価的な理解であり,脱会カウンセリングにおいて,信者を教団から家族へ引き戻すための実践理論でもある。布教が『その人のために』というパターナリズムで行われているのと同様に,カルト批判もパターナリズム的立場をとる。教団・信者側,反カルト側・元信者側がそれぞれ,宗教的自己決定権を主張し,相手をその侵害者として批判するのである。<BR>統一教会元信者による『青春を返せ』訴訟は,自己決定権の回復を求めた訴訟と位置付けられる。判決では,統一教会による正体を隠すやり方,伝道されたものを欺罔・威迫する方法が違法とされ,原告勝訴となった。この判決は宗教問題に法的介入が可能であることを示した点において画期的であったし,現代宗教の社会的位置付けを司法が宣言したという意味でも,今後,宗教界・宗教研究に大きな影響を与えることになろう。
- 2002-06-29
著者
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- リプライ
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- H.「カルト」調査研究の課題(II.午後4報告と討論,新・宗教研究の課題と展望,ワークショップ(3),2001年度ワークショップ記録)
- 大谷栄一・川又俊則・菊池裕生編著, 『構築される信念-宗教社会学のアクチュアリティ-を求めて』, ハーベスト社, 2000年10月刊, A5版, 185頁, 2600円+税
- 書評と紹介 林行夫著『ラオ人社会の宗教と文化変容--東北タイの地域・宗教社会誌』
- 東北タイ地域開発における開発NGOの課題--市民社会論との関わりで
- 在日タイ日系鉛筆製造企業における労働者のアイデンティティ形成と生活構造
- 新宗教教団の形成と地域社会との葛藤
- 松崎憲三編『東アジアの死霊結婚』
- 宗教実践の構成と社会変容 : タイ東北部農村社会における宗教伝統を事例に
- 浅野慎一著『世界変動と出稼・移民労働の社会理論』
- 板井正斉著, 『ささえあいの神道文化』, 弘文堂, 2011年6月刊, A5判, 235頁, 4,200円(書評とリプライ)
- 井上ウイマラ・葛西賢太・加藤博己編, 『仏教心理学キーワード事典』, 春秋社, 2012年5月刊, A5判, 378頁, 3,990円
- コメント1 宗教社会学から(社会参加を志向する宗教の比較研究-エンゲイジド・ブッディズム(社会参加仏教)を考える-,テーマセッション1,「宗教と社会」学会・創立20周年記念企画,2012年度学術大会・テーマセッション記録)
- 金子曉嗣監修, 松島公望・河野由美・杉山幸子・西脇良編, 『宗教心理学概論』, ナカニシヤ出版, 2011年11月刊, A5判, 248頁, 3,570円