茶樹の炭疽病類に関する研究 (II) : 外観健全葉から分離された炭疽病菌類の生理学的性質とその病原性に就て
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概要
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筆者等はさきに3種の炭疽菌類(Glomerella cingulata (STONEM.) S. and v. S.=G. c.と略称, Glomerella sp.=G. 2と略称, Guignardia Camelliae (COOKE) BUTLER=Guig.と略称)が外観健全な茶葉中に潜在することを明かにした。これらの病原菌は好適な条件にあえば一大発病を起因する懼れがあるものと考えられるので, これらの生理学的性質並びに病原性を明かにするため温度, 水素イオン濃度, 各種培地上の生育, 紫外線の影響及び接種試験等を実施した。1. 菌糸生長の最適温度はG. c.; 24∿28℃, G. 2 : 28∿30℃, Guig. : 24℃附近, 最高限界温度はG. c : 32∿36℃, G. 2及びGuig. : 38∿40℃と推定された。菌糸の致死温度は湿熱に於てはG. c.及びG. 2 : 50℃∿5分以下, Guig. : 55℃∿5分前後, 乾熱に於てはG. c.及びG. 2; 55℃-5∿10分, Guig; 60℃-5∿10分であつた。2∿4℃の低温では生長を認めることが出来ないが, 10∿30日間保存した後適温に移すと直ちに正常な生長を示す。-2∿-4℃で2ケ月間培養を保存すると之を適温に移しても正常な生長力を示さず悪影響を蒙るが, 時日の経過と共に生長力は正常に戻るようである。その生長力恢復の速さはGuig., G. 2,G. c.の順序であつて, 温度に対する抵抗力はG. c.が最も弱いようである。2. 菌糸生長の最適pHはG. c.及びGuig.; 5.2∿5.8,G. 2; 5.8∿6.8であつた。3. 基礎培地にNaNO_3,KNO_3及びasparagineをそれぞれ添加した合成寒天培地と酒粕及び馬鈴薯煎汁寒天培地上で供試3菌の菌糸の生育を比較した結果はそれぞれ特徴を示した。4. 紫外線照射による菌糸の生育は各菌とも1∿9分間照射で抑制されるが, やがて生長力は恢復する。照射直後の抵抗力はG. c.が強く, 子嚢殼の形成が促進される。Guig. では柄子殼の形成が若干促進される傾向がある。G. 2は子嚢殼を生じない。5. 菌糸及び胞子による接種試験の結果, 供試3菌は茶葉に対して病原性を示すが無傷接種よりも有傷接種の方が病斑の形成進展が遥に速やかである。病原性はG. c.が最も大であつたが, 他の2菌の病原性に就ては尚検討を必要とする。これら3菌を接種して茶葉上の病斑には菌による明かな差異を認めることは出来なかつた。りんご果実及び茶葉に対する接種試験に於てりんごから分離されたG. c.菌と茶葉のG. c.とは病原性は類似するが, りんご果実上の病斑の形成状態, 分生胞子の形態, その他に於て稍々明かな差異を認めた。分類学上の諸問題, 病原性の差異等については尚検討されなければならない。
- 京都府立大学の論文
- 1956-09-01
著者
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