ニワトリの胚子の十二指腸上皮の発達に及ぼす甲状腺ホルモンの影響

概要

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発生中のニワトリの十二指腸における粘膜上皮の組織発達に及ぼす甲状腺ホルモンの影響を明確にするため,白色レグホン種のニワトリ胚を用い,チオ尿素やチロキシンを投与した場合の十二指腸の変化を組織学的に検索した。まず,チオ尿素を投与して甲状腺機能を低下させた胚子の十二指腸では,腸絨毛の発達は遅延し,粘膜上皮において,グリコーゲン顆粒や空胞が異常に蓄積されるとともに,刷子縁が微弱なPAS陽性反応を示した。またこれらの一般上皮に介在して,少量の酸性粘液物質を含んだ杯細胞が腸絨毛の底部付近にわずかに認められた。一方,チオ尿素投与後にチロキシンを投与した胚子では,腸絨毛はチオ尿素のみを投与した場合にくらべて著しく伸長し,その発達の遅延が明らかに回復した。また粘膜上皮では,グリコーゲン顆粒や空胞がほとんど消失し,同時に刷子縁でPAS陽性反応の増強が認められた。杯細胞は粘膜上皮のほぼ全般で認められ,細胞内には酸性粘液物質がかなり多量に蓄積されていた。また粘膜上皮細胞のなかで杯細胞が占める割合について計測した結果,その割合はチロキシンの投与によって顕著に増加することが確認された。
1993-01-30