学生生活の学年変化に関する研究 : 第1回・第2回カレッジ・コミュニティ調査資料の比較分析
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概要
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1976年秋のCCA第1回調査において1年生サンプルに含まれ, 1979年秋の第2回調査において4年生サンプルに含まれ, かつ両調査に回答した134名の資料を用いて, (1)学生生活の実態, (2)目的意識と価値観, および(3)大学環境の認知における両調査時点間の変化を調べた。主な結果は次の通りであった。(1)学生生活の実態の変化 : (1)「学生同士の接触が少ない下宿・間借り」と「自宅」が減って, 「学生同士の交流がかなりある下宿・間借り」が増えており, 自動車通学が若干増えるとともに, 全体として通学所要時間もいくぶん短縮している。(2)1ヵ月の平均支出額も1年生時の17,422円から4年生時の28,703円(いずれも中央値)へと64.8%増(うち, 物価上昇分は16.9%)を示している。(3)1年生時には週平均約15講時登録していて, そのうち約11講時に出席しているが, 4年生時には約12講時登録していて, うち4講時出席しているに過ぎない。(4)1年生時に最も重視されていた語学の授業は, 4年生時にはクラブ・サークルに近い水準まで低下し, 代わってゼミナール(研究室)の活動が最重要視されるようになる。(5)余暇の過ごし方としては「レコード・楽器・絵画・工芸などを楽しむ」が減って, 「友人とのつき合い」が増えるが, (6)社会の動きに関する情報源を「仲間との話」に求める者はかえって減少している。(7)広義の準拠集団には「同じ講義に出てノートや参考書を貸し借りしている仲間」を選ぶ者が減って, 「ゼミナールや研究室の仲間」を挙げる者が増えている。(8)学生生活の充実感は男女とも顕著に高くなっている。(2)目的意識と価値観の変化 : (1)就職を意識して行動することは当然4年生に多い。(2)職業人のタイプとしては, 1年生時にはスペシャリストを志向する者が多いが, 4年生時には, ゼネラリスト志向が多くなる。(3)価値観としての「くらし方」については, 「その日その日をのんきに……」が減って, 「一生懸命働き金持ちに……」が増える。また, 男子では「趣味に合ったくらしを……」が減っているのに, 女子では逆に増えている。(3)大学環境の認知の変化 : (1)「大学環境調査」に含まれる5つの下位尺度のうち, 最も大きなプラス方向への変化がみられたのは共同性であった。1年生時に比べ4年生時には, 互いによく知り合う機会が多く, 遊びの仲間は集まりやすく, 学友たちの間での仲間意識は高いと感じており, また, 学生の個人的問題に対する教授たちの関心は必ずしも低くないことを知り, 一般に教職員に対する親近感も高く, 学内の人々は周囲に対して思いやりがあるとみるようになり, 大学の社会的評価に対する関心も高まって, 卒業後も何らかの形で大学とつながりを持ちたいと思っていると認知している。(2)実用性得点もいくぶん上昇している。すなわち, 学内の出来事に関する情報への接近しやすさ, コンパなど社交的な場が多く存在すること, 新しい流行に対する鋭敏さなどについての評価は上がる一方, カリキュラムに実用的な要素が欠けていること, .入学時美しいと感じたキャンパスにもなお充分でないものを認めるなど評価を下げている部分もある。(3)学究性は低下している。ゼミ活動や卒業研究による教師との接触を通して, 教師たちの厳しい学究的態度や教育努力を再認識するという局面も一部にはあるものの, 全体的傾向としては, さほど真剣に勉強しなくても容易に単位がとれ, 卒業できるという安易な認識が促進されている。(4)妥当性得点については尺度そのものの意味が必ずしも明瞭でなく, 今後検討する必要がある。(5)意識性得点はいくぶん上昇していたが, 個々の項目の変化は多様であった。
- 関西学院大学の論文
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