学生生活の充実感に関する研究 : 第1回カレッジ・コミュニティ調査資料の再分析
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概要
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本学総合教育研究室が1976年に実施した学生対象の調査より資料を得て, 学生生活の充実感がどのような要因と関連しているかを明らかにしょうとした。上記調査は,当時在学中の全学部学生(13,942名)より系統抽出法によって抽出された5分の1のランダム・サンプル(2,789名)を対象とする質問紙調査で, 有効回答票数は613票, 回収率22.0彩であった。資料の分析は, 設定された問題に対応して3つの部分に大別される。1.一般に, どのような要因が学生生活の充実感に寄与し, どのような要因がこれを阻害しているであろうか。この問題を検討するために, 学生生活の充実感を外的基準変数とし, 回答者の属性, 大学環境の認知, 正課活動, 課外活動・余暇活動, 社会関係, 就職に関する意識, 価値観・動機など7群28変数を説明変数とする数量化理論1類による分析を行った。用いた資料はあまりにもサンプルが小さい神学部生(3名)と回答もれのあった81名を除いた529名の回答であり, 外的基準変数と28箇の説明変数との間に得られた重相関係数はR=.6138(したがって, 決定係数はR^2=.3766)であった。充実感と最も強く関係していたのは余暇の使い方で, 免許や資格の取得のための活動や一般の勉強を含んでいる場合に充実感が高く, 麻雀・パチンコなどの遊びやアルバイトで過ごす場合充実感は低い。第2に大きな要因は大学の教育に対する評価で, この大学の教育が自分の将来に役立つと考えている者ほど充実感は高い。第3の要因は大学進学の動機で, いわゆる「青春型」が正に, [雷同型」が負に働いている。第4の要因は学年で, 低学年ほど充実感は低く, 高学年ほど高い。第5の要因は語学の授業に対する重視度で, 「非常に」または「かなり」重視している者の充実感は中程度であるが, 「いくらか」重視している者は顕著に充実感が低く, 「少しも」または「あまり」重視しない者の充実感が最も高い。以下, (6)社会の動きに関する情報源, (7)クラブ・サークルの重視度, (8)大学環境調査における共同性, (9)同じく意識性, (10)通学所要時間の順であった。2.学生生活の充実感を規定する要因は, 自宅通学生と寮・下宿に寄宿する学生とではどのように異なっているであろうか。自宅通学生(413名)と自宅外生(116名)とについて別々に上と同様の数量化1類による分析を行った(ただし, 説明変数は「住居」が減って27変数となる)。得られた重相関係数は, 自宅通学生についてR_A=.6370,自宅外生についてR_B=.8505であった(したがって, 決定係数はそれぞれ, R_A^2=.406,R_B^2=.723)。自宅通学生の充実感と強く関係している要因は重要なものから順に(1)余暇の活動, (2)大学進学の動機, (3)大学教育の有用性評定, (4)重視している集団の種類, (5)出席講時数, (6)クラブ・サークルの重視度, (7)大学環境調査による共同性, (8)同じく意識性, (9)社会の動きに関する情報源, (10)語学の授業の重視度などであり, 他方, 自宅外生では(1)くらし方(価値観), (2)大学進学の動機, (3)所属学部, (4)出席講時数, (5)学年, (6)余暇の活動, (7)大学環境調査による妥当性, (8)出身高校の種別, (9)通学所要時間, (10)大学環境調査による共同性などであった。大学進学の動機や余暇の活動, 出席講時数などの項目は比較的高い1順位で両群に共通して見られるが, 充実感へのかかわり方にはいくらか差異がみとめられる。大学進学の動機において「青春型」が正に働いている点は両群共通であり, 上でみた一般的傾向とも一致しているが, 「雷同型」が負に働くのは自宅通学生のみであって, 自宅外生ではむしろ正に作用している。余暇活動については, 資格取得のための活動や一般の勉強が正に, 麻雀・パチンコなどの賭け事が大きく負に働いている点は両群共通でかつ一般的傾向とも一致するが, アルバイトは自宅通学生の場合大きな負要因であるのに自宅外生の場合には必ずしもそうでない点が注目される。また, 出席講時数は, 自宅通学生の場合, 週9講時までは負, 10〜15講時でやや正に転じ, 16講時以上で顕著な正の効果を示しているが, 自宅外生では10〜15講時のところで最大の正の効果を, そして16時講時以上で逆に大きな負の効果を示している。自宅外生では, 自宅通学生とも全体の傾向とも異なって, くらし方(価値観), 所属学部などの変数が, 彼らの充実感と関係する重要な要因として現われているが, 自宅通学生では, 重視している集団の種類を除けば, 全体の傾向と比較的よく一致している。3.最後に, ゼミナール志向群, クラブ志向群, 道具的志向群, およびその他(対照群)における充実感の比較を試みた。クラブ志向群の充実感が最も高く, ついで道具的志向群, ゼミナール志向群と続き(ただし, 3群間には有意差なし), これら3群はいずれも対照群より有意に高い充実感を示していた。
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