ビッターリッヒ法に関する研究(林学部門)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
W. Bitterlichにより考案せられた林分断面積推定法および林分形状高の直接推定法をあわせてビッターリッヒ法と呼び, それによる林分材積の推定法について理諭的実験的考察を行なった。第1章ビッターリッヒ法の概要 一般にビッターリッヒ法と呼ばれている林分断面積推定法にはいろいろの解釈がある。BitterlichによるWZPの展開過程には2つの段階を画することができるが, 結局は可変プロット法と解釈することができるであろう。プロット面積を林木の胸高断面積に比例せしめるという可変プロット法のすぐれたアイデアは, 標本抽出をして, プロット設定の煩わしさから解放したが, 同時にWZPの標本抽出法としての性格を理解することを困難ならしめた。ProdanはWZPの単位を最大木の胸高断面積に対応する円プロットにとって, その内部に含まれる林木の位置的分布が正しく均等であるとき, WZPが成立することを証明した。現実の林分は一般にこのような状態にないため, WZPによる推定は誤差を伴なうが, 彼はこの誤差を不均質誤差と名づけた。Grosenbaughのポイントサンプリングは, それがビッターリッヒ法としてはじめてわが国に紹介された関係もあって, WZP自体と同一視されているようであるが, これは本来区別せらるべきものであろう。第2章WZPの確率論的解釈 WZPの性格を確率論的に考察した。クローネによる占有面積を理論にとり入れるため, 均質林分のモデル(A), および不均質林分のモデル(B)を設定した。まずモデル(A)において, Prodanと同じく, 最大カウント木に対する円プロットを単位にとり, その中心点における各直径階のWZPカウント数の分布法則を導いた。それは式(2-10)のようなHypergeometric functionで示される。総カウント数の平均は式(2-20)のようになり, これに対してWZPが成立する。不均質誤差はこの分布における分散式(2-21), 実用的には式(2-21)'''によって示される。不均質誤差の大きさについて次の諸点が明らかになった。(1)不均質誤差は単位面における林木の占有密度が高いほど小さい。(2)不均質誤差の分散は断面積常数に反比例する。(3)不均質誤差の百分率標準誤差は断面積常数の平方根に比例する。単位面をさらに大きくとってもWZPは成立する。林面全体を単位にとることもできる。その場合は, 林分が均質である限り, 不均質誤差は抽出誤差によっておきかえられる。単位面が大きくなるほど, カウント領域率が小さくなるから, 抽出誤差の分散は大きくなる。林分面積が充分大きくなれば, カウント領域率は無視できるから, 分散は式(2-31)'で与えられる。林分全体を単位にとった場合のWZPのカウント数の分散(不均質誤差の分散)の理論値と, 標本抽出によって得られるその推定値とを比較することによって, 林分の均質性がテストせられる。つぎにモデル(B)について考察した結果, 不均質林分についても, 単位面内における林木のあらゆる可能な位置的分布に対するカウント数の平均として, WZPが成立することが明らかにされた。第3章WZPによる標本調査 WZPによる林分調査には2つの形式が考えられる。林面全体を単位面と考えると無限形式になり, 標本は林分全体から, 視準面の重なりを考慮することなく, 任意に抽出すればよい。これに対し, 最大木の直径に対応する円プロットをWZPの単位面にとると, 林分はこれらプロットの集合として有限母集団とみなされ, 普通の定面積プロットの場合と同じく有限形式となる。誤差の推定は, 無限形式では式(3-2), 有限形式では式(3-9)による。断面積常数の選択は調査の精度に影響を及ぼす。多くの実験的研究によれば, 一般に断面積常数k4がもっとも偏りの少ない結果を与える。しかしこれは壮令林についていえることで, 林木平均直径との関連において, さらに詳しく研究されることが望ましい。カウント数の変動係数は, 不均質誤差の百分率と同じく, 断面積常数の平方根に比例する。功程面からみると, 標本の大ききを断面積常数に比例せしめるかぎり, 断面積常数による調査所要時間の差はないものと考えられる。結局断面積常数は, 結果に偏りを生じないかぎり, 任意に選ぶことができる。この場合, Bitterlichが示した"10∿20本のカウント数が得られるような断面積常数"は1つの基準となる。第4章林分形状高の推定 シュピーゲルレラスコープによるときは, 望高法に基づいて立木の形状高を簡単に測定することができる。これは精度面からも功程面からも, 充分実用に堪えることが明らかにされた。林分形状高を推定するには, Bitterlichに従って, B-Populationからの任意標本によるのがもっとも合理的でありまた簡単である。B-PopulationとはWZPにおけるカウント木の集合として想定される母集団であって, 現実母集団における本数分布を断面積によって重みずけたものと考えてよい。
- 京都府立大学の論文
- 1964-09-01
著者
関連論文
- 大野演習林測定試験地の記録(2)1983年および1993年の調査結果
- RICHARDS生長関数に基づく同齢単純林の胸高断面積合計と平均胸高断面断面積の生長モデル(II) : スギおよびヒノキの林分に対するモデルの適用
- 第1回林業統計研究会シンポジウム
- フランスの林業試験制度の改正について
- ビッターリッヒ・カウント数の分布と, 林分構造の均質性判定に対するその応用
- シュピーゲルレラスコープの新しい尺度目盛
- 114.W.Z.P.による林木分布の均質性の判定について(第72回日本林学会大会)
- ○世界各国における照査法
- Winkelzahlprobeの確率論的解釋と不均質誤差について
- Winkelzahlprobeについての考察
- 310.スピーゲルーレラスコブによる林分材積調査の功程について
- 幹形に関する研究(1) : 相対幹形について
- 310. 幹形についての一考察
- BLUME-LEISS測高器
- 211. 照査法の成長量査定に対する括約誤差の影響について(第63回日本林学会大会講演要旨)
- 相対材積の概念とその生長(林学部門)
- ビッターリッヒ法に関する研究(林学部門)
- 毎木調査による林分胸高断面積測定の誤差に関する研究(林学部門)
- 林分材積調査の時間分析(林学部門)
- 樹木の生長解析に対する RICHARDS 生長関数の適用性について(林学部門)
- 今須林業の経営環境と択伐林分の構造に関する調査報告(林学部門)
- Richards生長関数による生長解析--カラマツ,トドマツおよびアカエゾマツについての事例
- RICHARDSの生長関数をあてはめるためのコンピュ-タ-プログラムの作成