二重プライマーを用いたPCR法による牛初期胚の性判別

概要

論文の詳細を見る
牛Y染色体特異的遺伝子のDNA配列を基にして作出したプライマーBOV97M(157 bp)および牛α-Lactalbumin遺伝子を基に作出した雌雄共通プライマーBα-Lactaibumin(109 bp)を共用した二重プライマーPCR法により，牛初期胚の性判別を検討し，両者の信頼性を比較した。性染色体検査法により性判別が可能であった胚をBOV97MプライマーによるPCR法で性判別した結果，両者の性の一致率は，供試胚細胞数約20〜30個では100%(9/9例)，10〜15個では96.4%(27/28例)となった。従って，この範囲の検査細胞で正しい性判別が正確に行えることが示された。一方，二重プライマーPCR法により性判別した結果，雌雄共通DNAの検出率は，細胞数が8〜16個の場合には，95.2〜100%で，2〜4個細胞数の場合には，72.0〜83.3%となり，細胞数8〜16個の検出率は，2〜4個のそれより有意に高いことが認められた(p<0.05)。以上の結果，二重プライマーPCR法で用いたBα-Lactalbuminプライマーは，雌雄共通のDNAを的確に増幅し，また雄特異的プライマーと同時に使用すると，10〜15胚細胞数試料からの牛初期胚の性判別法として信頼し得る方法であることが認められた。
1995-12-01