熱的内部境界層によるフューミゲーションに適用するプルームモデルについて : TOKAI 82〜83 大気拡散実験データの解析
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
沿岸地域の高度120mから浮力の無いガスが排出され, 陸側に熱的内部境界層によるフューミゲーションが発生する場合に, サイト敷地境界以遠の地上最大濃度をプルームモデルを用いて高濃度側に推定する手法を研究した。この研究には, かつて日本原子力研究所が行った沿岸地域における大気拡散実験TOKAI82〜83のデータを利用した。現状では, 大気乱流と濃度の立体的な自動観測法が十分に発達していないため, フューミゲーションの発生条件を厳密に規程することができない。そのため, 従来の正規型ブルーム式, パスキル安定度およびPG線図を組み合わせて濃度評価を行う方式を従来法と名付け, 従来法による評価値と実測値が大きく異なる場合に着目した。データの選定条件を実験期間の8月の日中, 比較的好天の海風時で, 熱的内部境界層が形成されて放出口付近の大気が安定状態であることとし, 従来法では明確に濃度を過小評価してしまうような地上主軸濃度が実測された場合をフューミゲーションと考えた。データ解析の結果, 放出口付近の気温鉛直勾配-0.5℃/100m以上で, 必ずしも気温の逆転層でなくともフューミゲーションが発生していた。また, 従来法および米国原子力規制委員会(US.NRC)のRG(規制指針)1.145の想定事故時濃度評価用のフューミゲーション式による計算値を実測値と比較検討した。その結果, 従来法そのままでは過小評価の傾向が認められ, 従来法のパラメータをずらしても改善の効果は小さかった。一方, RG1.145の式の値はフューミゲーション時の大気拡散実験の上限値に近いが, 実験値を下回らなかった。したがって, このRG1.145のフューミゲーション式が, 我が国においてもフューミゲーション時の短時間高濃度評価に適用できる式の候補であることが判明した。
- 社団法人大気環境学会の論文
- 1998-11-10
著者
関連論文
- パーフルオロカーボンとSF_6との比較拡散実験
- 海上大気拡散評価手法の確立研究
- 「竹内清秀名誉会員」に聞く : 「風と私」-子供のときや青春期の経験あるいはそれに基づく心象は, その人のその後の歩みにどのような影響を与えるのであろうか-
- 第8回大気科学とその大気質への応用(ASAAQ203)国際会議報告
- P166 風況調査用小型ドップラーソーダの開発
- ドップラーソーダと気象観測塔による風速変動の比較観測
- ドップラーソーダにおける風速測定誤差について
- ドップラーソーダによる風の観測
- ドップラーソーダによるσ_wの観測値について
- ドップラーソーダによる風観測について
- ドップラーソーダによる風観測の諸特性について
- 境界層レーダーを用いた"局地前線"の鉛直構造の解析
- 境界層レーダーによる寒冷前線の観測
- 境界層レーダーによるメソスケールの寒冷前線の解析
- 境界層理論と野外実験の適用による大気拡散推定法の研究
- 海上の境界層の特性により修正したPGT拡散幅を用いる海上低所源用正規型プルームモデル
- 桜島起源の硫黄酸化物の拡散と沈着量の推定
- 3D1015 LESモデルによる冷却塔白煙の数値シミュレーション
- 平坦な沿岸地域における海風時の熱的内部境界層高度 : TOKAI 1982〜83大気拡散実験の再解析およびKASHIMA 1972〜77飛行機観測との比較
- 1M15 沿岸サイトの年平均濃度の影響評価に用いる簡易フューミゲーションモデル
- 境界層レーダー/RASSによる梅雨前線の解析
- 河村武会員を偲ぶ
- 吉武素二名誉会員のご逝去を悼む
- 熱的内部境界層によるフューミゲーションに適用するプルームモデルについて : TOKAI 82〜83 大気拡散実験データの解析
- 「煙 : 大気中における振る舞と姿」, 横山長之著, 白亜書房, 1997年12月, 150頁, 4,190円
- 学会賞(功績賞)を受賞して・・・風とわたし・・・
- IAMAP総会報告
- 境界層理論と野外実験の適用による大気拡散推定法の研究
- 書名 : 風の気象学(気象の教室 4 ), 筆者 : 竹内清秀, 体裁 : A5版, 184頁, 本体定価 : 2900円, 発行年月 : 1997年6月, 出版元 : 東京大学出版会
- 平滑地上の鉛直方向乱流強度とPG大気安定度階級との関係
- P/G線図の拡散幅に対応する Monin-Obukhov の長さの導出