苦味の選択的マスキング剤 -そのメカノズムと応用-
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概要
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食品および医薬品の分野において, 苦味を抑制する技術は広く望まれている。我々は, ホスファチジン酸 (PA) とβ-ラクトグロブリン (LG) からなるリポ蛋白質 (PA-LG) が, 甘味, 塩味, 酸味に影響することなく, カエルおよびヒトの苦味応答を選択的に且つ可逆的に抑制することを見出した。PAと各種の蛋白質から作製したリポ蛋白質の苦味応答に対する作用を調べたところ, PAを含むすべてのリポ蛋白質に苦味抑制作用が認められた。このことから苦味抑制のキー成分はPAであることがわかった。苦味抑制のメカニズムは, PA-LGが味受容膜の苦味受容サイトをマスキングすることによるものと推測される。つぎに, 実用化を考慮してPA単独および他のリン脂質の苦味抑制作用をヒト官能評価により調べた。その結果, PA単独の場合にもPA-LGには劣るものの苦味を抑制することが明らかになった。また, PIにもPAほどではないが苦味抑制作用のあることがわかった。これを利用して大豆レシチンを原料にしてエタノール抽出法によりPAとPIを高濃度に含むレシチン画分を工業的規模で生産している。得られたレシチン画分およびPAは, 食品および医薬品の苦味マスキング剤として広く使用することが可能であり, すでにさまざまな食品で使用されている。
- 社団法人 日本油化学会の論文
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