磁場勾配パルス法を中心としたNMR測定法の進歩
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概要
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NMRの歴史の中で「もうNMRは終わり」と言われた時期が何回かあった。有機化学への応用に限っても, 1960年代半ばが一つの時期であった。この時期はCW (continuous-wave) 機の簡易型が普及し多くの経験則が生まれ, 数々の名著が出版された。1966年, ErnstとAndersonはFT-NMRの実験に成功し, 様々なパルステクニックの発展につながった。1970年代は<SUP>13</SUP>CNMRの実用化で始まり, 超伝導磁石による高磁場化とJeenerの二次元NMRの提起と実現化への競争の時代となった。1980年代初期, 二次元 (三次元も二次元の延長と考える) もそろそろ限界かと思えた頃, 多量子NMRとかHOHAHA (TOCSY) の概念の実用化が提起され, そしてインバース法が生まれた。これらは驚くほど早いスピードで普及した。90年代初期は磁場勾配という一部の人にしか興味のなかった技術が中心に躍り出てきた。これら高分解能溶液NMRの進歩においては, 周辺にある固体NMR, MRIなどの技術や考え方が持ち込まれた場合が多いことに気がつく。もちろん逆の動きも当然あるのだが。こうしてみると, 視野を広くもってそれぞれの進歩に目を配る必要性を痛感する。本文では触れなかったが, データ処理を行うコンピュータの進歩は目覚ましく正に日進月歩である。これらの最良の果実はNMRの世界にもすぐに入ってくる。ここで紹介したPFGの高分解能溶液NMRへの導入はこの分野に新しい測定法をもたらしてくれた。NMRの進歩は不可能であったことを可能にしてくれる。NMRの発展にはそれを利用する研究者のNMRへの期待と要求が必須である。そのためには多くのNMR利用者がNMRデータのみでなく, NMRそのものに興味を持ち, NMRについて理解することが必要である。本解説が少しでもその手助けになれば幸いである。
- 社団法人 有機合成化学協会の論文
- 1996-05-01
著者
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