足底の色素斑に関する臨床的,病理組織学的検討―足底悪性黒色腫早期病変検出のための臨床指針の提示―
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概要
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足底の色素斑については,良性の色素細胞母斑群と悪性黒色腫早期病変とを鑑別することがきわめて重要である.そのためには,どのような臨床的特徴を呈する足底の色素斑が悪性黒色腫早期病変である可能性が高いのかを具体的に明らかにしておく必要がある.そこで,われわれは本邦人足底の色素斑92病巣(87症例)を臨床的,病理組織学的に詳しく検討した.この92病巣中88病巣(84症例)がメラノサイト性病変であり,その疾患別内訳は,先天性色素細胞母斑9病巣,通常の後天性色素細胞母斑群65病巣,dysplastic nevus 5病巣,足底悪性黒色腫早期病変疑診例5病巣,足底悪性黒色腫早期病変4病巣であった.皮疹の大きさに関しては,通常の後天性色素細胞母斑群の病巣で皮疹の最大径が7mmを越えるものは1例も見出されなかった.先天性色素細胞母斑を除くと,最大径が7mmを越える皮疹は8病巣みられ,その内訳はdysplastic nevusと悪性黒色腫早期病変疑診例が各2病巣,足底悪性黒色腫早期病変が4病巣であった.患者の(受診時)年齢については,通常の後天性色素細胞母斑群とdysplastic nevusの患者は大多数(94.9%)が50歳未満であったのに対し,足底悪性黒色腫早期病変の患者は,文献例も含めると13症例中11例が50歳以上であった.今回の検索結果に基づき,われわれは足底悪性黒色腫早期病変を検出するための具体的な臨床指針を下記の如くに提示した.すなわち,足底の色素斑については,その最大径を計測するとともに,それが先天性色素細胞母斑やblack heelなどである可能性がないか検討する.これらの可能性が否定される病変で,1)最大径が7mmを越えるものは足底悪性黒色腫早期病変である可能性が考えられるので,辺縁から5mm程度離して全摘し,病理組織学的に検討すべきである.2)最大径が6mmから7mmまでのものについては,皮疹の形状,色調,境界などに顕著な不規則性が認められる場合や,50歳以上の患者にみられた場合には,これを切除して病理組織学的に検討すべきであろう.3)上記2項目のいずれにも該当しない足底の色素斑については,よほど不規則で疑わしい臨床所見を呈するものでない限り,切除せずにそのまま経過をみてよいものと思われる.ただし,もし皮診が拡大して最大径が7mmを越えるようになった場合は,早期に再診するように患者を指導すべきである.ここに提示した如き具体的な臨床指針により,足底悪性黒色腫が早期に検出されて治療されるならば,本邦における悪性黒色腫の予後は大幅に改善されうるものと期待される.
- 公益社団法人 日本皮膚科学会の論文
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