CTX-M-2型 <I>β</I>-ラクタマ-ゼ産生<I>Klebsiella pneumoniae</I>による牛乳房炎の発生
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究の目的は日本の乳牛における乳房炎に関与するCTX-M型 <I>β</I>-ラクタマーゼ(CTX-M)産生<I>Enterobacteriaceae</I>の存在を明らかにすることと,その乳房炎罹患牛の臨床経過を調査することである。2006年の8月から2007年1月に北海道根室支庁の1,000酪農場で発生した20,194頭の乳房炎牛の30,237検体の分房乳から分離した51株のセファゾリン耐性のオキシダーゼ陰性・グラム陰性桿菌株をClinical Laboratory Standards Institute(CLSI)標準のコンビネーションディスク法による基質拡張型 <I>β</I>-ラクタマーゼ (ESBLs) 確認テストを用いてスクリーニングした。ESBLs確認テスト陽性株はPCRとDNAシークエンスによりCTX-M-,TEM-,SHV-型 <I>β</I>-ラクタマーゼの遺伝子型別を行った。また21の抗菌薬の最小発育阻止濃度(MIC)を測定した。2農場における2頭の乳房炎罹患牛の3つの分房から3株のCTX-M-2産生<I>Klebsiella pneumoniae</I>を分離同定した。1頭の乳牛は全身症状のない軽症の急性臨床型乳房炎(ブツを含む軽症の水様乳汁,分房の軽度の腫脹と熱感・硬結)を表し,診断後4週間で軽快した。他の1頭の乳牛は全身症状を伴う重症の急性臨床型乳房炎を表し,診断後10週間で軽快した。これらの分離株はアンピシリ,セファゾリン,セフロキシム,セフォタキシム,セフトリアキソン,セフポドキシム,セフチオフル,セフキノム,カナマイシン,オキシテトラサイクリンには耐性を表した。一方,セフタジジム,セフメタゾール,モクサラクタム,イミペネム,アズトレオナム,ゲンタマイシン,トリメトプリム/スルファメトキサゾール,エンロフロキサシンには感性であった。本研究は日本における牛乳房炎に関与するCTX-M産生<I>K. pneumoniae</I>分離株についての初報告である。
著者
-
澤田 拓士
日本獣医生命科学大学
-
大西 守
根室地区農業共済組合
-
原田 和記
鳥取大学農学部
-
高橋 敏雄
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医微生物学教室
-
丸茂 健治
昭和大学医学部微生物学教室
-
江嵜 英剛
畜産生物科学安全研究所生物工学部
-
志村 圭子
畜産生物科学安全研究所生物工学部
-
江嵜 英剛
畜産生物科学安全研究所
関連論文
- 日本の鳥類由来 Pasteurella multocida 株における細胞付着遺伝子および付着蛋白抗原の分布
- 食中毒細菌の穀類加工品での生残とカテキン類の効果
- 犬の細菌性膿皮症および細菌性尿路感染症を適応症とする動物用抗菌性物質製剤の臨床試験実施基準の設定について
- Pasteurella multocida 国内分離株における細胞付着遺伝子の分布
- 3.牛の上部気道におけるMannheimia heamolyticaの分離と薬剤感受性(一般講演,第21回日本獣医畜産大学学術交流会)
- 関節炎罹患豚由来アクリフラビン耐性豚丹毒菌の病原性と遺伝学的性状
- 健康牛の扁桃由来 Erysipelothrix 属菌の豚に対する病原性
- 健康牛における Erysipelothrix 属菌の保菌状況
- 日本における豚由来Streptococcus suis薬剤感受性に関する10年間の調査
- 健康牛からの Erysipelothrix 属菌の分離と分離株の諸性状