小児重症紫斑病性腎炎に対する血しょう交換療法の有効性とその限界
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概要
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紫斑病性腎炎 (HSPN) に対する血漿交換療法 (PP) の有効性とその限界を明らかにする目的で,PP単独療法を実施した小児重症HSPN17例 (男女比: 10/7,発症年齢: 8.1±3.2歳) の臨床経過をretrospectiveに検討した。PP治療開始時には全例で高度蛋白尿 (4.7±2.5g/m2/日) がみられ,うち11例で腎機能低下 (51.6±14.1ml/min/1.73m2) が認められた。発症からPP開始までの期間は平均76.1±86.5日であったが,うち11例は発症後2カ月以内にPPが開始されたのに対し,1例は発症後1年以上経過してからPPが開始された。PP開始直前に実施された腎生検では,半月体/分節性病変形成率は平均71.8±11.1%であった。PPは導入療法として週3回の割合で2週間,その後週1回の割合で6週間,合計12回を目途に実施した。PPの短期的治療効果 (治療開始3カ月後) として,発症後1年以上経過してからPPが開始された1例を除く16例で有意な蛋白尿の減少 (1.2±0.7g/m2/日,p<0.01) が,また同様の1例を除く10例で明らかな腎機能の改善 (89.9±14.0ml/min/1.73m2,p<0.01) が認められた。長期的治療効果として治療開始3カ月以降の蛋白尿の推移を検討したところ,(1)蛋白尿が引き続き減少し最終的に陰性化した群: 蛋白尿消失群 (n=11) と,(2)蛋白尿が再び増加した群: 蛋白尿持続群 (n=6) の2群に分かれた。蛋白尿消失群のなかで腎機能が低下した症例はなかったが,蛋白尿持続群6例中3例が透析導入に至った。透析導入例のうち1例はPPによる短期的治療効果がみられなかった症例であった。PPは小児重症HSPNに対して有効な治療法である。しかし,PPによる大きな効果を得るためには,発症後早期から実施することが肝要である。一方,疾患活動性が長期にわたり持続する症例に対しては,ステロイドや免疫抑制剤による後療法の必要性が示唆された。
- The Japanese Society for Pediatric Nephrologyの論文
著者
-
甲能 深雪
東京女子医科大学腎臓小児科
-
此元 隆雄
東京女子医大腎臓病総合医療センター小児科
-
伊藤 克己
東京女子医大腎臓病総合医療センター
-
川口 洋
東京女子医大腎センタ一
-
服部 元史
東京女子医科大学 腎臓小児科
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服部 元史
東京女子医科大学 腎臓小児科
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此元 隆雄
東京女子医科大学 腎臓小児科
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甲能 深雪
東京女子医科大学 腎臓小児科
-
川口 洋
東京女子医科大学 腎臓小児科
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