発達期における歯科健康教育に関する考察
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概要
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発達期の歯科医学的管理は, 健康教育の問題を含めて包括的な立場から検討する必要があると思われる。歯科疾患相互の病因論的, 症候論的な共通性や, 年齢, 社会的背景による病態の流動性からみて, 咬合系の画一的な健康教育, 管理基準や治療方針が, 必ずしも常に最善であるとは考えられないからである。<BR>しかし, 現実には, 乳歯咬合期から永久歯咬合期にいたる歯科疾患の管理は, 多くの学校歯科健診にみられるように, 齲蝕中心のものであって, 歯周疾患や不正咬合についてはあまり重要視はされていないように思われる。<BR>著者らは, 昭和56年5月, 東京都内のある国立大学附属学校部の, 幼稚園から高等学校までの生徒, 1,627名の歯科健診を行う機会を得た。<BR>本報告は, この歯科健診の結果にもとずき発達期における歯科疾患と咬合の管理と処置のための目標を設定し, あわせて健康教育改善の方向を見い出すことを目的としたものである。<BR>齲蝕は3歳から4歳にかけて急激な増加を示していたことから, 3歳児あるいはそれ以前に歯科医の管理下に入ることが必要と考えられた。高校生においては, 少数ではあるが重症齲蝕の放置が認められたことから, 思春期以前の教科としての健康教育の充実が望まれた。<BR>歯肉炎については3歳児ですでに25.7%, 4歳児で62.1%が罹患しており, 学年の進行に伴い重症化の傾向を示したことから, 歯口清掃の実技を対齲蝕のものから対歯周疾患的なものへと切り替えてゆく必要が考えられた。<BR>不正咬合については, 歯科健診が有効な時期が発達期の中に3回あると考えられた。すなわち3歳児, 小学校では2年か3年時, 中学校高学年または高校低学年時である。また従来の診査方法に加えて, 全ての学校歯科医によって活用できるような不正咬合の重症度を含めた審査方法の整備が必要と思われた。
- 有限責任中間法人 日本口腔衛生学会の論文
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