しょうゆ有機酸の新しい単離法の開発とガスクロマトグラフィーによる定量
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概要
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しょうゆ中の揮発性有機酸と不揮発性有機酸を同時にガスクロマトグラフィーによって分別定量することを目的とし,有機酸抽出法,試料前処理法の簡略化,迅速化について検討した. エーテルによる有機酸抽出法として従来行なわれているエーテル連続抽出法は,有機酸収量が最も高かったものの,自動抽出とはいえ抽出に90時間を要することは,エーテルの揮発性,引火性などを考えるとき,長時間にわたって管理に十分の注意を要するとともに,抽出に時間がかかりすぎる欠点がある. マジョニヤ管を用いる抽出法は,試料によっては抽出操作中にエマルジョンを形成して,抽出が困難になる可能性があり,また有機酸抽出率も今回検討した中では最も低く,連続抽出より迅速ではあるが必ずしも満足ではない. 新たに開発した無水硫酸ナトリウム・セライトを用いてビーカー中で抽出するバッチ式抽出法は,装置,操作が簡便であるのみならず,迅速(約1時間)であり,エマルジョンを形成しない.また連続抽出に対する有機酸の回収率はグリコール酸,ピログルタミン酸,クエン酸がそれぞれ60,59,66%であったのを除いて,ほかは満足すべき抽出率が得られた.これらを考慮して,しょうゆの迅速簡便な有機酸抽出法として最も優れているといえる. エーテル抽出した試料は,従来(9〜11)のようにカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を併用して有機酸を単離する必要はなく,カチオン交換樹脂のみの処理で十分で,分析操作が簡略化され,かつ分析時間が短縮された. 新しく開発したバッチ式抽出法と簡略化されたイオン交換樹脂処理と,著者らが先に開発したGCによる揮発性および不揮発性有機酸の定量法を併用することにより,従来の分析法よりもグルコール酸,ピログルタミン酸,クエン酸の収量は低かったが,分析の迅速さ,簡便さはこれをしのぐものであり,多くの目的に対し十分に満足できるしょうゆ有機酸の分別定量法といえる.本分析法の開発は,しょうゆの有機酸分析による品質評価,特に本醸造しょうゆとアミノ酸調味液の判別,安息香酸,パラオキシ安息香酸ブチルの有機酸との迅速簡便な同時分別定量を可能にした.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文
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