正常妊娠と妊娠中毒症における血中レプチン濃度の調節機序に関する研究

概要

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　正常妊娠と妊娠中毒症における母体血中レプチン濃度を調節する機序の解明を試みた．　非妊婦158例（N群），正常妊娠の初期197例（P1群），中期204例（P2群）と末期243例（P3群），軽症妊娠中毒症19例（MP群）と重症妊娠中毒症23例（SP群）の各群の血中レプチン濃度（lep，ng/ml）および血中lep濃度とBMIとの相関を検討した．N群，P1群，P3群やSP群の一部では開腹手術時に腹壁皮下脂肪組織と胎盤絨毛を採取し，homogenate上清中のlep濃度とob mRNA発現量（定量的PCR）を各群間で比較した．　血中lep濃度はP1群，P2群とP3群ではN群に比し，またSP群ではP3群やMP群に比し有意に高値であった（それぞれp＜0.0001）．血中lep濃度とBMIとの間には，N群，P1群，P2群とP3群で有意の正相関を認めたが（それぞれp＜0.0001），P1群における相関（r=0.729）はN群（r=0.564）に比してより高く，MP群とSP群では有意な相関を認めなかった．脂肪組織homogenate上清中のlep濃度とob mRNA発現量はN群とP3群の間で差はなかった．P3群の胎盤絨毛homogenate上清中のlep濃度とob mRNA発現量はP1群に比し有意に低値であった（p＜0.005とp＜0.05）．SP群の脂肪組織homogenate上清中のlep濃度とob mRNAの発現量はP3群と差はなかったが，胎盤絨毛homogenate上清中のlep濃度とob mRNAの発現量はP3群に比し有意に高値であった（それぞれp＜0.05）．　これらの成績から，妊娠時期により血中lep濃度の調節に関与する組織が異なる可能性があることが示された．妊娠初期の増加した血中lep濃度とBMIが非常に強く相関することは，この時期に脂肪細胞のlep産生が増加していることを示唆し，胎盤絨毛からの産生とともに血中lep濃度の調節に関与することが考えられる．しかし妊娠末期では脂肪組織の血中lep濃度調節への関与は薄れ，胎盤における絨毛量の増加とlep発現の程度が主に関与すると考えられる．一方，重症妊娠中毒症における血中lep濃度の増加には胎盤絨毛におけるlep発現の増加の影響が考えられた．〔産婦の進歩57（1）： 24-31，　　2005（平成17年2月）〕
近畿産科婦人科学会の論文

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