妊娠中毒症胎盤におけるecto-ATPDaseの発現と活性に関する研究
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概要
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妊娠中毒症の胎盤では,絨毛膜の血小板凝集阻止活性やADP分解活性の低下が胎盤梗塞の発生に関与していると想定される.胎盤にはCD39(vascular ecto-ATPDase)とplacental ecto-ATPDase(そのisoformと考えられる)が存在し,血小板凝集抑制作用を発揮しているが,妊娠中毒症胎盤における病態生理学的意義は不明である.そこで,妊娠中毒症の胎盤絨毛膜におけるecto-ATPDaseの発現と活性の変化を検討した. 妊娠末期の正常妊娠12例(N群)と重症妊娠中毒症10例(P群)を対象として,同意を得て分娩時に採取した胎盤絨毛におけるecto-ATPDaseの局在(免疫組織染色法),蛋白発現(Western Blotting法,arbitrary unit)ならびにmRNA発現(real time quantitative PCR法,fg/pg b-actin)を検討するとともに,一部の胎盤(N群5例とP群3例)から抽出したecto-ATPDaseの酵素活性を測定した(M±SD). N群とP群の胎盤絨毛上皮にecto-ATPDaseの局在を認めた.P群のecto-ATPDaseの蛋白発現量(1.58±0.39)はN群(1.00±0.34)に比し高値であった(p<0.01).P群におけるplacental ecto-ATPDaseのmRNA発現量(1.15±0.89)はN群(0.36±0.30)に比し高値であった(p<0.05).P群のCD39のmRNAの発現量は0.73±0.29で,N群では0.33±0.10であった.抽出したecto-ATPDaseの酵素活性(unit/mg protein/min)はP群(8.7±6.5)でN群(19.4±1.9)に比し低値であった(p<0.05). 妊娠中毒症胎盤においては,絨毛膜におけるecto-ATPDase活性の低下していることが抗血栓機能障害の原因と考えられた.酵素遺伝子の転写および蛋白レベルでの発現量は増加していることから,酵素活性低下に対する代償的な反応が生じている可能性が示唆された.〔産婦の進歩56(4):442-451,2004(平成16年11月)〕
著者
-
松本 雅則
奈良県立医科大学輸血部
-
藤村 吉博
奈良県立医科大学輸血部
-
藤村 吉博
奈良県立医科大学 小児科
-
山崎 峰夫
奈良県立医科大学産科婦人科学教室
-
土肥 祥子
奈良県立医科大学健康政策医学
-
山崎 峰夫
奈良県立医科大学 産科婦人科学教室
-
堀 謙輔
奈良県立医科大学産科婦人科学教室
-
堀 謙輔
奈良県立医科大学 放射線
-
阪本 義晴
奈良県立医大
-
森川 肇
奈良県立医科大学 放射線
-
森川 肇
奈良県立医科大学産科婦人科学教室
-
松本 雅則
奈良県立医科大学 輸血部
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