チユーリップの垂下球(dropper)形成に関する研究(第4報) : 栽培条件を異にして生産された球根の dropper の発現の差異
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概要
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1. 第3報の実験において, 種球の植え付けの深さ, 土壌水分, 土質, 土壌酸度, 日長, および肥料の3要素の施肥量を異にして生産した球根を, 同一条件で栽培し, 次代の生育や垂下球の発現に前代の栽培条件がいかに影響するかを調査した。2. 一般に当代で垂下球が多く出たような栽培条件で生産された球根は, 次代でも垂下球が多くあらわれた。たとえば, 浅植え区で生産された球は深植え区の球根より次代に垂下球が多くあらわれ(第1表), 砂土産の球根は砂壌土産球根より次代に垂下球が多く発現した(第3, 4表, 第1図)。また土壌水分条件では, 当代の場合と同様, 乾燥区で生産された球根は湿潤区で生産された球根より, 次代に垂下球が多くあらわれた(第2表)。しかし肥料条件を異にして生産された球根の間には, 当代と同様に次代でも垂下球の発現率に大差が認められなかつた (第7, 8, 9表)。3. このように栽培条件がその代ばかりでなく, 次代の垂下球発現にまでも影響するのは, チューリップが生育中に, すでに次代の新球となる孫球を, 新球 (子球) の鱗片基部に形成しはじめるため, 両者が同じ栽培条件の影響を受けるためと考えられる。4. 日長処理の影響は前報のごとく当代には認められなかつたのに, 次代に大きな影響があらわれ, 短日区産の球根は長日区や自然日長区産の球根より次代に垂下球の発現が少なかつた(第5表)。また土壌酸度の後影響の実験では, アルカリ区産の球根は中性または酸性区産の球根より次代に多く垂下球ができた(第6報)。これは中性区がアルカリ区や酸性区より垂下球の発現率が高かつたという前報でのべた当代に対する影響と異なつた。5. チューリップの垂下球は, 一種の土壌適応形質と見なすことができよう。
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