ストックの花芽分化に対する低温要求性の品種間差異
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概要
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1. 早生, 中生および晩生に属するストックの諸品種をそれぞれ 12°C, 17°C および 22°C の恒温で育て, 生育, 開花の状態を観察した。青苑, 光輝やホワイト•ジャイアントなどのように 12°C でのみ花芽分化したものから, スノー•ホワイト, 紅桜, 紅潮などのように 22°Cでも花芽を分化させる品種にいたるまで, 品種によつて花成誘起のための低温要求度にかなりの差が認められた。また花芽を生じうる苗令も品種によつて異なうていた。全般的にみて早生品種は低温要求度が低く, しかも若い苗令時に花芽分化を起こし, 晩生品種ほど花成のためにより強い低温と, より進んだ苗令を必要とする。各温度下で花芽分化した品種についてみると, 高温下のものほど花芽分化時の葉令は進んでいた。茎の伸長度は生育の初期には低温区で低かつたが, 中期以降は高温区ほど低下していた。ただし先勝の雪は 22°C でも順調な伸長を示した。2. 恒温での栽培において異なる低温要求性を示した品種を選び, これらを温度, 日長条件の異なる時期に生育させて, その生育, 開花状態を比較するために, 春, 夏, 秋, 冬の4期に分けては種し, 栽培した。春まき株は幼苗期に 15°C 以下であつたが, 次第に高温に向かう季節に生育したため, 各品種とも急速な伸長を示した。しかし低温要求性の低いスノー•ホワイト, 先勝の雪などは夏までに全株が開花したが, 要求性の強い品種では一部または全部が花芽未分化に終つた。幼苗期に低温をうけなかつた夏まき株では先勝の雪のみがロゼットになることなく開花し, 他の品種は栄養生長のまま秋を迎え, 秋まきの幼苗と同時に低温をうけた。この両者の発蕾期を比較すると, 夏まき株のほうが早く発蕾した品種, 秋まき株のほうが早かつた品種, および両者にほとんど差がみられない品種とに分かれ, 苗令と低温感応性との関係は品種によつて異なることがわかつた。3. 春まき, 夏まきおよび秋まきの株にそれぞれ GAを定植から発蕾まで散布した結果, 草丈の伸長においては春まき株では顕著な効果を示さなかつたのに対し, 秋まき株および冬まき株では明らかに伸長を促進した。また夏まき株では高温による節間伸長抑制作用が防止された結果, 高温下でも順調に草丈を伸ばした。開花に対する効果としては, 各期のものとも発蕾および開花を早めたことのほか, 春まき株で一部花芽未分化株のあつた品種の開花率を高め, 低温をうけなかつた夏まきのスノー•ホワイトを秋の低温到来までに開花させるなどの結果が得られた。このように GA の効果も品種や処理の時期によつてその程度がかなり異なつていた。
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