和ナシ果実の日肥大周期に関する研究 (第3報) : 果径の日肥大周期に及ぼす発育後期の夜温の影響
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概要
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1968年に, 発育後期の夜温が果実の日肥大周期と果実成分に, どのような影響を及ぼすかについて調査した. 実験の一つは, はち植えの長十郎ナシの1年生結実樹を用い, 7月30日より9月18日 (収穫日) まで夜間のみ人工気象室に入れ, 15°C, 22°Cおよび30°Cの温度処理を行なつた. 他の一つは, 二十世紀ナシの10年生成木を用い, 8月2日から10月3日 (収穫日) まで, その亜主枝を夜間のみ30°Cに保ち自然夜温条件下のものを対照として比較した.1. 8月下旬までは, 高夜温の影響がほとんど認められなかつた. 8月末以後 (昼高夜冷季), 30°C区では昼間の収縮が大きくなり肥大量は急激に低下した. これを処理開始から収穫期までの肥大量としてみると, 22°C区または自然夜温区で最もすぐれ, ついで30°C, 15°Cの順に低下した.2. 15°C区では, 概して日振幅が小さく, 昼間の収縮が最も早く減退した. しかし, 収縮の消失は22°C区で数日早く, 30°C区では逆に著しく遅れ, 収穫期に達しても収縮現象が認められた. また, 15°C区では, 成熟に近づくと夜間に代わつて昼間に肥大した.3. 収穫果の糖度 (検糖計示度) は22°C区に比べ15°C区で低く, 30°C区ではほとんど相違なかつたが, 滴定酸度は15°C区で低く30°C区で高かつた. このことは, 日肥大周期と合わせて考えると, 30°C区の熟期が著しく遅延したことを示すものと思われる.4. 長十郎ナシについての実験から夜温が成熟期に及ぼす効果を判断すると, 22°Cに比べて15°C区では2〜3日早く, 30°C区では10日以上遅延したものとみられる.5. 単位生体重当たりの果実呼吸量は成熟期には減少したが, 同一時期の比較では常に高夜温ほど高く, 一例として8月29日の夜間における比率をみると, 22°C区を100とすると30°C区では174の値を示した.6. 長十郎ナシの葉について見かけの同化量をみると, 22°C区を100にとれば, 30°C区で84.4, 15°C区では56.3であつた. また, 15°C区では葉内水分の日変化が少なかつた. これらの結果から, 成熟期に15°Cの低夜温に置かれると代謝が不良になるものと考えられる.
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