和ナシ果実の日肥大周期に関する研究(第6報) : 果径の日肥大周期と土壌湿度との関係
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概要
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二十世紀ナシの成木を用い, 高温乾燥季のかん水量およびかん水時刻が, 果実 (果径) の日肥大周期および形質, 熟期に及ぼす影響を調査し, さらに, かん水によって被袋の有無が日肥大周期にどのような相違を生ずるかを観察した.1. 高温乾燥季における果径の日変化をみると, 適量かん水により昼間の収縮は著しく抑えられたが, 日振幅量および肥大量の相違はごくわずかであった. 過量にかん水すると, 昼間の収縮量が無かん水よりも大きくなり, 夜間の肥大量は著しく劣り, 日振幅量も劣った.2. かん水後の果径日変化を連続的にみると, 適量かん水による肥大促進は, かん水直後の夜間に著しく, その後は無かん水とそれほど変らなかった. この間の累加肥大量も差異はわずかであった. 過量かん水では, かん水初日には収縮せず逆に著しく肥大したが, 翌日以降は昼間の収縮が著しくなり, 当日の収縮量をその日に回復するだけで, 累加肥大量も著しく劣った.3. 収穫果についてみると, 無かん水区では小さく, 酸度が高かったのに対し, 適量かん水区では大きさ, 糖度, 外観がすぐれた. 過量かん水区では中位の大きさであったが糖度が最も低く, ユズハダ果を多く生じた.4. 果径の日肥大周期に及ぼすかん水時刻の影響は概して不明瞭であり, かん水処理3区はいずれも無かん水区に比べ, 昼間における果径の収縮量が相対的に小さく, 肥大量が幾分すぐれた. かん水処理を行なった区の肥大量は朝夕かん水区がすぐれ, ついで夕方かん水区, 朝方かん水区の順であった. 処理間における収縮および肥大時刻の遅速は明らかでなかった.5. 収穫果についてかん水時刻の影響をみると, 朝夕かん水区では果実重が最もすぐれ, 糖度は逆に無かん水区とともに最も劣った. 朝かん水区は全く逆に, かん水区の中では果実が最も小さく, 糖度は夕方かん水区とほぼ同様でともに幾分高かった. 酸度は無かん水区で著しく高く, かん水処理区間の差はわずかであった. 結局, 果実の形質は夕方かん水区でわずかにすぐれた.6. かん水と被袋の有無による日肥大周期の変化をみると, 6月下旬〜7月上旬には, かん水により無袋果の昼間の収縮は著しく大となったが, 累加肥大量は有袋無袋ともにかん水によって5〜6%高まった.7. 8月下旬には, 果実の被袋により昼間の収縮が著しく抑えられ, この傾向はかん水区でとくに著しかったが, 有袋果では, かん水による日振幅量および肥大量の変化はわずかであった. 無袋果では, かん水により肥大が著しく促進され, 3日間連続の累加肥大量は, かん水区では無かん水区の3倍であった. この時期における昼間の果実温をみると, 無袋果の無かん水区で上昇が激しくこの傾向はとくに浴光果で著しかった.8. 初秋における果径の日変化型からみると, 有袋果無袋果ともにかん水により発育ステージの遅れを生じ, 無袋果の無かん水区の熟期が最も進んだ.
著者
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