ウンシュウミカンの栽植方式と樹形に関する研究(第1報) : 異なる樹形における着果部位別日射量, 気温, 果実温の日変化と1日の積算日射量
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概要
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ウンシュウミカンの栽植様式. 樹形. 整枝並びにせん定などの樹形管理技術の合理化と品質向上対策を図るための基礎資料を得る目的で, 1977年の7月から同年12月にかけて, 開心自然形と柵仕立ての杉山系普通ウンシュウミカン成木の異なる着果部位における受光量, 気温及び果実温の日変化を調査した. 結果は以下のとおりである.1. 各月の1日の総全周短波放射量は, 開心自然形樹では樹冠の南側上部において最も高く, 他の着果部位でも概して上部において南側とほぼ同じであったが, 柵仕立て樹では樹冠上部でも少なかった. この相違は, 柵仕立て樹が南北方向の生垣状樹形で, 日射程度が午前と午後とでかなり異なるためであり, 開心自然形樹では半球状樹相のため, 終日平均的に日射を受けることによるものであろう. 樹冠下部の1日全周短波放射量はかなり少なく, 特に北側下部では, 秋季には南側上部の2%程度に落ち込み, 夏季においても45%程度となった. 樹冠内部における1日の総全周短波放射量は低く, 特に柵仕立てでは南側上部の10〜20%程度であった.2. 開心自然形樹の着果部位ごとの気温は, 樹冠南側, 東側上, 下部, 内部では, 日の出から正午過ぎにかけて西側上, 下部, 北側上, 下部よりも早く昇温したが, その後日没まで, 西側上, 下部よりも低くなって徐々に下降した. 西側上, 下部では14時頃までは, 昇温が遅れぎみとなったが, その後16時頃までにかなり高くなり, 更に日没まで他の部位よりも高く, 特に東側上, 下部よりも明らかに高温で推移した. 北側上部では日の出から時期にもよるが16〜18時頃まで昇温は遅れたが, その後日没まで東側上, 下部よりも高くなった.内側では午前中西側上, 下部, 北側上, 下部より昇温は早かったが, その後16〜18時頃まではほぼ一定気温で推移し, 概して16時以降東側上, 下部よりも高かった.柵仕立て樹の着果部位ごとの気温は, 午前中は樹冠の東側上, 下部の昇温が顕著であり, 西側上, 下部では東側よりも遅れて昇温した. 正午になると, 西側上, 下部において高くなり, その後日没に向って下降するものの, 他の部位よりも明らかに高く, 特に, 東側よりも西日の影響が強く現れ, 長く高温が持続するものと思われる. 樹冠内側では東西から太陽の影響を受けているため, 各部位の同時刻の気温の昇降変化のなかで常に中間的な推移を示した. ところが, 東側上, 下部では時期にもよるが14時頃から気温の低下が速くなり, 日没まで各部位中最低の気温を示した. このように, 柵仕立て樹では午前と午後とで気温分布がかなり異なっていることが明らかである. その理由として, 同樹形樹は南北方向の壁様樹相を呈し, しかも樹冠幅は狭いものの枝葉の着生密度が高いため, 大気が枝葉間を流れにくい状態となっていることから, 午前中は東側が, 午後は西側の気温が高まりやすくなると考えられた. そのため, 特に西側では西日の受熱量が貯えられやすいものと思われた.3. 開心自然形樹の果実温は, 午前中, 東側上, 下部の温度上昇が早く, その後西側上, 下部が高くなった. 南側の果実温は午前中は, 東側よりも, また, 午後には西側よりもそれぞれ低くなった. 北側上部の果実温は, 午前中低かったが, 午後かなり過ぎると, 南側よりもむしろ高くなった. 北側下部では果実温の昇温は著しく遅れ, 日中は低かった. 内部でも北側下部とほぼ同様に果実温の上昇は遅れ, 午後も低くなった. 柵仕立て樹では午前中, 東側上, 下部, 西側上部の果実温は早く上昇し, 東側下部ではその後急下降したが, 正午以降再び上昇した. そして, 日没に向って下降した. 西側下部, 内部の果実温は正午過ぎまで他の部位よりも上昇は遅く,しかも最高温度も低く, 更に, 夕刻近くなると, 内部の低下は特に早かった. 西側下部では西日を受け, しかも地表面温度の影響を受けるためか, 果実温度の下降は遅れぎみとなった.
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