ウンシュウミカンの栽植方式と樹形に関する研究 (第2報) : 異なる樹形における着果部位別の日射量, 気温及び果実温の旬平均値の時期別変化と相互関係
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概要
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ウンシュウミカンの栽植様式, 樹形, 整枝並びにせん定などの樹形管理技術の合理化と品質向上対策を図るための基礎資料を得る目的で, 1976, 1977年の7月から12月までの間, 開心自然形と柵仕立ての杉山系普通ウンシュウミカン成木について異なる着果部位における受光量, 気温及び果実温を調査し, それに基づいて積算日射量及び積算気温と積算果実温との相互関係について検討した.1. 開心自然形樹の旬平均日射量は, 樹冠南側と西側上部は常に高い値を示すグループであり, 次いで, 東側上部と北側上部が高いグループであった. 東側下部と西側下部は9月下旬まではほぼ同じ値で推移したが, その後11月上旬まで西側下部で高くなり, 東側上部や北側上部とほぼ同じ値を示すようになり, 11月下旬から北側上部と同じ値になった. したがって, 9月上旬から東側下部は西側下部と北側下部の間で時期別変化を示したが, 概して, 東側下部と西側下部は第3番目のグループとなった. 北側下部は8月下旬までは内部と東側下部の間で推移したが, 以後12月上旬までの間, ときとして内部よりも高い時もあるものの, 概して内部よりも低くなった. 内部では8月下旬までは最も低かったが, その後10月上旬まで北側下部と交錯しながら進み, 10月中旬以降は北側下部よりも高くなった. したがって, 8月中旬以降は北側下部と内部の旬平均日射量は最も低いグループとなった. 樹冠南側, 東側上部, 西側上部並びに北側上部では直射日光を受ける部位が多いため, 暦日の進行に伴う太陽の移動, 天候の影響などで, 日射量の変動が激しいのに対して, 北側下部や内部では樹冠上部や周囲に枝葉が重なっているため, 直射日光の影響を受けにくいのであろう.柵仕立て樹における着果部位別の旬平均日射量の時期別変化は概して3グループに分けられる. すなわち, 東側上部が最も高く, 次いで西側上部が高いが両部位ともほぼ同程度の旬平均日射量で推移し, 高いグループであり, 次いで, 東側下部, 西側下部はほぼ同程度の数値で推移し, 中間的なグループとなり, 内部は最も低く東側上部, 西側上部の1/4〜1/3, さらに, 開心自然形樹の約1/5量で, 低いグループとして分けられる.旬平均気温は, 樹形や着果部位の相違による影響はほとんどなく, 各旬の着果部位間の気温差は1°C以内であった. 積算気温は, 開心自然形樹では内部, 西側上部で高く, 北側上, 下部, 西側下部が低かった.旬平均果実温は, 概して樹冠上部で高く, 下部で低かった. 内部では10月中旬以降果実温が高くなる傾向にあった. また, 北側下部では10月上旬以降著しく低下した. しかし, 各部位間の差はせいぜい0.5〜1.0°Cであった. 柵仕立て樹の旬平均果実温は東側上部, 西側上部で高かった. 内部では低かった.積算果実温は南側上部, 東側上部で高く, 北側下部では低かった2. 開心自然形樹における全調査期間中の積算日射量と積算果実温との相互関連性をみたところ, 回帰係数は日射量の多い部位において低く, 柵仕立て樹も開心自然形樹に準じて東側上部, 西側上部が低くなった. このことは, 日陰部の果実は枝葉で覆われているため, 少しの日射を受けても果実温が上昇しやすい条件にあることを示している. 両樹形樹の各着果部位に極めて高い正の相関があり, 特に葉層の深い部位の果実温は日射の影響を受けやすいことがうかがわれた. 更に, 全調査期間中の20日ごとの積算日射量と積算果実温との間には, 極めて高い正の相関がみられた. 開心自然形樹の回帰係数は柵仕立て樹のそれよりも高く, 葉層の厚い開心自然形樹では, 果実温度は日射量の多少に強く影響される.3. 概して, 直射日光の当る着果部位において, 回帰係数が高くなる傾向にあり, そのような部位では積算果実温は積算気温に強く影響を受け, 反対に, 樹冠内部では回帰係数が小さくなって, 気温よりもむしろ日射量の影響度が大きくなる.
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