シラン及びエビネの種子形成, ならびに種子発芽について
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概要
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シランおよびエビネの2種類のランを供試し, 胚珠形成および受精後の種子形成過程を組織学的に観察するとともに, 種子形成過程と種子発芽との関係を検討した.1. 子房の大きさは, シランおよびエビネのいずれにおいても受粉すると急速に肥大し, シランでは受粉後60日ごろまでに, エビネでは受粉後50日ごろまでにそれぞれ一定値に達した.2. 種子および胚の大きさは, シランおよびエビネのいずれにおいても, 受精すると急速に増大し, 受粉後80〜100日ごろにそれぞれ一定値に達した.3. 胚珠形成は, シランおよびエビネのいずれにおいても, 受粉後30〜31日ごろに完了した. 重複受精は, シランおよびエビネのいずれにおいても, 受粉後38〜40日ごろに行われた. 胚のう核は, シランでは8個, エビネでは5〜6個それぞれ観察された. 受粉後から胚発生完了までに要する日数は, シランでは95〜100日, エビネでは85〜90日であった.4. 胚発生過程の様相は以下のようであった. すなわち, シランでは胚の頂部の片側にわずかに子葉の分化がみられた. 4細胞期では, シランおよびエビネはA2型であった. 4細胞期以降の胚発生過程をみると, シランはC型 (Limodorum abortivum 型) の変異型, エビネはE型 (Liparis pulverlenta 型) に, それぞれ類似していた. シランの胚は前胚頂部方向の細胞から, エビネの胚は前胚頂部方向の細胞および同下部方向の頂部側の細胞とから, それぞれ形成された.5. 受精後の胚乳核は, シランでは4〜8個, エビネでは3〜4個観察された. また, 胚柄はエビネで観察され, 胚管はシランで観察された.6. 種子の発芽能力は, シランでは胚形成開始以前(受粉後45日ごろ)から, エビネでは前胚の4細胞期以前(受粉後50日ごろ)から認められた. なお, いずれのランにおいても胚発生完了前後において最も発芽率が高かった. 培地としては, MS培地およびKC培地に比較してH培地が優れていた.
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