ラン科植物の胚発生過程と発芽との関係に関する研究
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概要
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47種のラン科植物を供試し未熟種子の胚発生過程と発芽の様相との関係について追究した.<BR>1.供試材料47種における初発芽能を示す種子の胚発生段階は,4細胞期以前から中間期までの範囲にあり,ほとんどの種において発芽率が低く,発芽後の発育が不良で,平均発芽日数も長くなる傾向がみられた.クマガイソウは例外的で,初発芽能を示す種子がもっとも発芽率が高く,平均発芽日数も短かった.<BR>2.鮫高発芽率を示す種子の胚発生段階は,16細胞期から胚発生完了以降に及ぶ範囲にあったが,胚発生完了前後の段階において最高発芽率を示す種がほとんどで(クマガイソウおよびキンランを除く)あった.最高発芽率は,0.8%から100%の範囲にあり,この段階にある種子はいずれの種も(クマガイソウを除く)発芽後の発育が良好であった.とくに洋ランの種(<I>Phal.schilleriana</I>を除く),エビネ属の熱帯産落葉性の種およびエビネ属に近縁とされる5種において発芽率が著しく高く,一方,この段階ではとくに発芽率および発芽後の発育が不良だったのは,クマガイソウおよびキンランであった.<BR>3.初発芽能や最高発芽率を示す種子の胚発生段階と開花期の子房の発育程度との間には密接な関係は認め難かった.<BR>4.最高に達して以降の発芽率の様相は,a型:観察した最終の齢において最高発芽率を示し,子房が黄変裂開直前のもの,b型:観察した最終の齢において最高発芽率を示し,さらに齢が増すことにより発芽率が変化する可能性があるもの,c型:発芽率が低くなる傾向が認められたもの,およびd型:観察した最終の齢まで最高発芽率が持続していたものの4型に分けられ,c型がもっとも多かった.<BR>5.平均発芽日数は,3日から305日の範囲にあり,齢および種による変動がきわめて大きかった.<BR>平均発芽日数と齢との関係は,a型:齢が増すにしたがって平均発芽日数が短くなる傾向が認められるもの,およびb型:平均発芽日数がもっとも短かった齢を境に,それ以降再び平均発芽日数が長くなる傾向が認められるものの2種類の型がみられ,a型に属する種が多かった.<BR>6.培地としては,一般的にはHyponex培地がすぐれたが,オニノヤガラおよびホウサイランに対しては,Murashige and Skoog培地が発芽率および発芽後の発育に対して好適な結果をもたらした.<BR>7.供試材料47種における胚発生段階と発芽との間には上記した諸関係のいずれにおいても,亜科の特性が現れているとは認め難かった.
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